インターネット上の違法コンテンツを取り締まるという名目で提出されたネット法案、Stop Online Piracy Act(SOPA)に関する議論はまだアメリカでは喧々諤々の議論が続いています。
そんな中、SOPAに対する代案を作成しようとする動きも出てきました。民主党の上院議員Ron Wydenと共和党の下院議員Darrell Issarが音頭を取るOnline Protection & ENforcement of Digital Trade Act(OPEN Act)は、文字通りインターネットのオープンさと、コンテンツクリエイターの利益両方が守られることを担保する法案を作ることを目標に掲げられています。
この法案はまだ作成中なのですが(作成途中の法案のサマリーはこちら)、画期的なことにこれは、法案作成の過程をkeepTheWebOpen.comというサイトで全て公開しています。そればかりか、アメリカに住んでいる人ならだれでもアカウントを作成すれば、この法案の条文について意見をコメントし、提案をしたり、実際の条文の修正案を提示することができます。
個人でも、どこかの団体でもOK、もちろんSOPAに賛成の人ですら、意見を述べることができます。
SOPAもその前身のPIPAも、ハリウッドなどの既存の著作権産業の意見ばかり吸い上げて作ってしまったことを考えるとかなり画期的な試みですね。しかも、SOPAも超党派で推進されていますが、こちらも民主、共和両党の議員が参加していて超党派の対抗馬です。
電子フロンティア財団(EFF)によると、SOPAとの大きな違いは、
- ISPや検索エンジンには何の義務も課さない。DNSシステムに関する記述はSOPAと同様。
- 対象となるサイトの定義がかなり絞られた。「著作権侵害行為のみを目的としている」、「(米国)国外のドメインを通してアクセス可能な」、「サイトの所有者、または運営者が故意に著作権侵害行為に従事しているか、または著作権侵害に従事している以外にないとされるような限定的に使用されている」ウェブサイトなどの文言が追加されている。
- 独立行政機関である国際貿易委員会(ITC)はコンテンツ所有者からの訴状・請求を調査する任務を負う。そのITCのプロセスは現在は特許関連のケースに行われているものであるが、透明で素早く、効果的である。両党ともに議論に参加する機会を保証され、その記録は公開される。そのプロセスは、サイトへの訴状の通知とそれに続く調査、訴状・請求に対する異議申し立てする権限に関することなどが含まれる。
ISPや検索エンジンに対して、ブラックリストに認定されたサイトをブロックするよう義務付けていて、対象となる違法行為を働くウェブサイトの定義が非常に曖昧でかなり広範囲な解釈が可能であって、しかもコンテンツ所有者が裁判所に訴え出た場合、サイトの所有者に与えられていた異議申し立ての期間が実質5日しかなかったSOPAに比べるとかなりの改善点が見られます。SOPAではどのサイトをブロックできるかを実質著作権保持者と裁判所で決定できてしまうところを、その決定を独立行政機関であるITCに委ねるという形になっています。これだけでも相当大きな前身ですね。
このOPEN Actはアメリカに在住の方ならだれでも無料でコメントを書き込めるようになっています。登録はKeepTheWebOpen.comからできます。
http://keepthewebopen.com/
どのような法案ができるにせよ、こうした透明なプロセスで有権者自身が参加して作った法律なら、国民も納得できるところがあるでしょうね。日本では違法ダウンロードの刑事罰化の問題がありますが、ぜひとも法案作成の過程もオープンな場で議論していただきたいものです。
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