ハフポストに、現在公開中の台湾のドキュメンタリー映画『私たちの青春、台湾』のフー・ユー監督にインタビュー記事を書きました。
民主主義の困難さ、若者たちの情熱と挫折。台湾「ひまわり運動」のドキュメンタリーが描くもの | ハフポスト
これは大変すばらしい作品でで、民主主義の本質的に困難な部分を描こうとしているし、近年の台湾リベラル社会の矛盾にも光を当てた誠実な作品です。
2014年のひまわり運動の成功などで、東アジアの民主主義の優等生と言われる台湾ですが、その実情の複雑さに目を向けた作品です。運動の光と影を双方描いていて、世界中で民主主義が行き詰っているような現代において、もっとも今観られるべき作品と言えると思います。
本作はまず着眼点というか、主人公として取り上げた2人が素晴らしかったと思います。一人は中国大陸出身でありながら、台湾の社会運動に興味を持った女子大生で、大陸と台湾に引き裂かれたような存在です。彼女の存在は、台湾の民主主義の矛盾点を明確に浮き彫りにしています。
もう一人の運動のリーダー格である青年の辿る道程もまた、世の中の摂理と不条理を同時に体現するかのようです。権力の横暴を批判した側が権力を用いた不正に傾きそうになる。そして、輝いていたリーダーも「脛に疵持つ」存在であるということ。だれも完璧にクリーンはいないのが当たり前であるが、クリーンでいることを求められる時代、我々はどうすればいいかわからず、この青年もまた失脚していきます。
何より、フー・ユー監督の誠実な姿勢が素晴らしい作品です。メディアに携わる人にこの映画の監督を知ってほしいとすごく強く思います。私たちは、ニュースで日々いろいろな人を取り上げるのですが、勝手に誰かに期待をかけすぎていないか、そのせいで歪んだ認識を持ってしまっているのではないかと、この映画は突き付けてきます。
近年の民主主義の行き詰まりについて考えてみたい方は、ぜひこの映画を見てください。かならず、参考になるはずです。
以下、原稿作成時のメモです。
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記事のポイントをどこに置くべきか。
Point3つ
・はじめは社会運動が社会を変えていくことを描く作品にしたいと思っていた
・挫折も赤裸々に描くと言う方向にまとめたのはなぜか
・青春映画であるということ
Intro
近年の台湾の社会運動に身を投じた若者たちをとらえたドキュメンタリー映画『私たちの青春、台湾』が10月31日から公開される。
近年、東アジアにおける民主主義の優等生と言われる台湾。しかし、その内実は日本から見れるほどに単純なものではない。本作は、近年の台湾における社会運動に身を投じた若者たちの情熱と挫折を描き、民主主義が持っている本質的な困難さを描いている。
台湾の民主主義の真実を赤裸々に映す本作を作ったフー・ユー監督に、本作の制作経緯と狙いについて話を聞いた。
Body1はじめは社会運動が社会を変えていくことを描く作品にしたいと思っていた
概要:主人公となるのは社会運動に身を投じた2人の若者。ひまわり運動からその後の挫折を克明に追いかけている。
チェン・ウェイティン、ツァイ・ボーイ―の2人がたどる道について記述。どんな挫折を体験するのか。
なぜ、このような作品になったのか、製作当初はどういう作品にしようと思っていたのか。
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フー・ユー:はじめは社会運動に関する作品ということで、社会運動を私自身はよくしらなかったし、少し怖いイメージを持っていました。しかし、チェン・ウェイティンという人、あるいはツァイ・ボーイーのような社会運動をやっている人たちと知り合ってそれは台湾社会をよりよくするためのものだということを実感しました。
それで、より多くの人に社会運動を知ってほしい、決して乱暴な人たちが喧嘩しているものじゃないんだということを知ってほしいと思いました。社会には様々な不平等があって、それを治すために彼らは声を上げているんだということを知ってほしかった。そして彼らが非常に少数で運動しているわけですが、いろいろ失敗ながら苦労を重ねてそれでも彼らが希望を捨てずに運動を続けていくというものを想定していました。
でも実際にはそういう想定の作品にはなりませんでした。彼らは失敗したあと、長い間立ち上がれずにいましたし、私自身もそうでした。何か別の形でこの作品を終わらせないといけないということで2年後に彼らと会い、最後のシーンを撮影するに至りました。
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どう民主主義は困難なのか。。。。ひまわり運動の占拠中の、若者たちによる「小さな政府」と密室での決定劇、、、結局反対している連中と同じことをしている。運動中の矛盾とその後の矛盾。台湾ナショナリズムとリベラルの結びつきについて記述する。
Body2 最初の想定通りにどうしてつくらなかったのか。
前向きな内容にまとめることは可能なはず。編集次第でいくらでもできるはず。
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そうしなかったことが、この映画の重要な点
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理由は3つ
・助成金をもらっていたから、完成させる義務があった
・ただ運動を礼賛するものにはしたくなかった
・運動の良い点も悪い点も知ってほしいと思った
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この映画の正直さは、今大変に重要な要素ではないか。民主主義を成立させるうえで大事な要素と言えるのではないか。都合の悪い事実にも目を向けることの大切さを描いている。
Body3 これが青春映画であること
「青春」という言葉をタイトルに含めているのはなぜか。
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政治性よりもそちらを強調するようなタイトル。。。監督を含めた3人の青春的な挫折やほろ苦さ、そして成長が描かれるから
ツァイ・ボーイーが中国で出版した本のタイトルにもインスピレーションをもらっているらしい
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監督自身の成長が描かれていることが重要な要素。
↓具体的にどんな成長を遂げたのか
誰かに期待をかけたり、誰かのせいにするのではなく、自分の足で立つことを推奨する作品。
Concl 台中相互理解はどうなるか
この映画は、中国大陸では公開されていない。
大国に対する憂慮から、台湾人は中国人に対して私自身の許容範囲を超えたレベルの敵対意識を持ってしまっています。私がずっとドキュメンタリーの題材として関心を持って求めてきたのは、敵対せざるを得ない両極の人たちの最大公約数が存在するのか、つまり相手を理解することを試み、更に進んで協力関係が生まれる可能性があるのかということです。
この作品の撮影を通じて、私は幸いにも二人と深く付き合う機会を得ることができ、この二人がお互いの国家と民主について理解を深めていく過程を通じて、台湾海峡両岸の市民間における相互理解の可能性と、どのようにしても協力することが難しい政治の現実に気づくことができました。(プレスシートより)
この映画を中国から旅行に来た人や留学生も見てくれたことが希望の一つ。
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質問
・監督はカメラを回し始めた当初、この映画をどんなものにしようと思っていたのですか。最初はこういう結末を望んでなかったわけですよね。
・若い力が社会を変える希望のある話、そして台湾と中国の相互理解が進むことを期待していたのですか。
・チェン・ウェイティンとツァイ・ボーイーの2人とどんな風に出会ったのですか。
・その後の失速を抜かして、ひまわり運動の成功あたりで映画にまとめてしまおうと考えたことはないんですか。
・ひまわり運動で立法院の中で占拠中の密室の議論を撮影中、何を感じていたのですか。ナレーションでは「早く終わってほしかった」と言っていますが。
・監督は台湾のナショナリズムの高まりを率直にどう捉えているのですか。
・台湾のリベラル思想と反中国、台湾ナショナリズムの結びつきが語られます。こういう社会の矛盾をあぶり出す意図を持っていたのですか。
・大学の関係者がツァイ・ボーイーが中国籍を持っているのが問題だと堂々と言っていますが、彼らはリベラルな民主派なのでしょうか
・なぜ2年後に二人に会うことを決めたのですか。
・社会運動もドキュメンタリーも無力と思ったとナレーションにもあります。その気持ちは今もかわらないでしょうか。
・希望を押し付ける残酷さや民主主義の困難さに気づけたことは前進だと捉えていますか。
・台中の相互理解にこの映画が貢献できると思いますか
・青春映画であるとしたのは、なぜですか。
・性的スキャンダルの件で、彼の選挙スタッフには女性もいましたけど、女性スタッフにその件をどう感じていたか、カメラを回しながらどう感じましたか
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メモ、終わり。
本作の後半で描かれる主人公2人の挫折は、ひまわり運動終結後の1年で起きているんです。たった1年で天国から地獄みたいな感じで落ちていきます。
台湾の市民運動の成功は、同時に台湾ナショナリズムにも火をつけ、リベラルな価値観の広がりと同時に偏狭さも広がっていたという矛盾が記録されているのが、本作のすごい点で、それは今日の社会の根深い問題をしめしています。台湾だけでなく、世界中で同じようなことが起こっていると思います。
これは本当に素晴らしい作品なので、ぜひ見に行ってください。必ず得るものがあると思います。
上映情報は公式サイトで確認してください。