アニメ!アニメ!の敵役連載で『鬼滅の刃 遊郭編』の堕姫と妓夫太郎を取り上げました。
「鬼滅の刃 遊郭編」堕姫と妓夫太郎は「ある意味」生まれる前から鬼だった | アニメ!アニメ!
「遊郭編」は、鬼滅のエピソードの中でも特に好きな物語です。遊郭という場所の歴史の困難さが濃密に描けていると思います。
鬼という存在で遊郭を描くというのは、実に上手いというか、遊郭の子供は生まれる前から「鬼」と呼ばれるのです。というのも、堕胎することを「鬼追い」と呼んだりしていたんです。「遊郭編」の敵である堕姫と妓夫太郎は、生まれる前から鬼と呼ばれてたようなものなんだと思います。
醜さと美しさにこだわりを持つこの敵役ですが、そのキャラクター付けもまさに遊郭の表と裏という感じがします。本当にデザイン含めて見事な造形だったと思います。
以下、原稿作成時のメモと構成案になります。
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堕姫・・・唾棄と読める。。。。誰にとって唾棄すべき存在か
彼女は見にくいものを唾棄する、遊女は世間に唾棄された存在か
醜さと美しさ、、美しさばかりが価値を持つ世界で、兄妹の絆が最後に訪れるから、この物語は感動的
るろうに剣心の駒形由美。。。芸娼妓解放令、牛馬きりほどき令
この法律改正の影響を本から取ってくる。。。性差の日本史 153P
鬼追い。。。遊郭で子どもを堕ろす(堕胎)
2人はある意味、生まれた時から鬼だったのだ
2人を助けたのは、鬼である童磨
構成
Point3つ
遊郭で生まれる子供は、生まれる前から鬼と呼ばれる・・・鬼追いと鬼灯の話
醜いものを嫌悪する。。。外見だけがすべての基準のような言動をする2人の敵役・・・それはどこで学んだ価値観か
2人が消えそうになる時、ののしり合う語彙は、あれしか語彙を持たずに生きてきてしまったから
最期に戻る絆。。。。炭次郎が自分と重ねるシーン。。。
Intro
堕姫と妓夫太郎は死んでから鬼になった。
だけど、2人は生まれる前から「鬼」だった。
それが遊郭という場所だ
Body1遊郭の鬼追い
遊郭では、生まれてくる子供を堕胎するために鬼灯の毒が使われていた。
それを「鬼追い」と呼んだ。つまり、腹にできた赤ん坊は鬼なのだ。
妓夫太郎「生まれてくる前に何度も殺されそうになり、生まれてからも邪魔でしかなく、何度も殺されそうになり」
地獄屋の地獄女郎地獄腹に鬼居付く
居付いた鬼を
なじょして払う
クサギ ジャクロで鬼は外 (P123)鬼追い 続昭和遊女考 竹内智恵子
Body明治から大正の遊郭
華やかさと美の世界であると同時に、美だけが基準になり得る世界
人身売買の世界でもある。
↓
るろうに剣心の由美さんの話から、芸娼妓解放令、牛馬きりほどき令の話
マリア=ルース号事件の年に法律が改正された。しかし、現実はかわらなく、もっとひどくなった面もある
明治になり、それは建前上、自由営業とみなされ、かえって差別が強くなった。
性差の日本史から引用する
しかし、この法によって、遊女たちは自らの「自由意志」で売春をする娼妓とされ、それまでの遊女屋や抱え主は娼妓に営業のための場所を貸す「貸座敷」業であると、新たに定義し直されました。現実には親の借金などのために身売りさせられる女性はその後もあとを絶ちませんでしたが、建て前ではあくまで自分の意思で売春する存在とされたのです。その結果、娼妓たちに対して「みだらな女」という差別的なまなざしも強くなっていきました。
そんな世界で生き抜こうとするには、美しくあらねばならず、そういう価値観で生きねばならなかった。
醜さを嫌悪し、美しいものだけを食べる鬼はこうして生まれた。
Body3 美醜だけが価値観の二人はなぜ生まれた
妹も染まりやすいと妓夫太郎は言う。。。だが、まず最初に彼を染めた世界がある。
「部下は駒、妻は後継ぎを産むためなら死んでもいい、本人の意思は尊重しない、ひとすら無機質」
「自分を形成する幼少期に植え込まれた価値観を否定しながら、戦いの場に身を置き続けるのは苦しいことだ。」
↓
宇随天元はそういう環境にいて、葛藤と矛盾を抱えて戦っている
お館様がそういう生き方を認めてくれたから、彼は戦える。
2人には、そういう存在がいなかった。
この残酷な世界に、生まれる前から鬼にされ、死んでからも鬼になるしかなかった哀しい2人。
最期に兄妹の絆は残ることがせめてもの救いだ。外見も何も関係のない強い絆が。
【参照】
『鬼滅の刃』で論争、遊郭の作品利用を忌避すべきではない…普遍的価値の認識こそ重要
明治期の開国以降は、高まる国際的な人権意識の潮流の中で、日本政府は自国の公娼制度(遊廓)の温存に腐心した。加えて前近代までの売買春に寛容だった社会から変質し、近代以降は娼婦に烙印を負わせる社会になった。
参考本
鬼追いー続昭和遊女考
昭和遊女考
鬼灯火(ほおずき)の実は赤いよ 遊女が語る廓むかし
吉原はこんな所でございました 廓の女たちの昭和史
芸娼妓解放令
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メモ終わり。
参考に読んだ本がどれも素晴らしく、勉強になりました。歴史は本当に一面だけ見ていてはわからず、複雑で多面体なんだなと改めて思いました。
そんな複雑さをわかりやすい物語に落とし込んで、なおかつ奥行きを失っていないこのエピソードは、本当に出色です。
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