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映画レビュー『モバイルハウスのつくりかた』坂口恭平を追ったドキュメンタリー

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坂口恭平についてのドキュメンタリー映画


坂口恭平さんについてのドキュメンタリー映画「モバイルハウスの作り方」を見てきました。僕は坂口さんについては、著書を読んだこともなく、彼がしゃべっている姿を見た事もありません。ただ一応ネットメディアで流れてくる情報はあって、「印象」は持っています。空き家を利用して、独立国家を云々かんぬん。。。。

日本の都市には空き家が実は増えていて、それを有効活用するのはとてもいいことだと思うのですが、それの有効利用のソリューションとして独立国家の建設って、随分大きな飛躍してる気がしていたのですが、この映画を見て坂口さんの人となりを見るにつけ彼が何をしようとしているのか、おぼろげですがわかったように思います。

坂口恭平さんは、早稲田の建築学科出身で、その時現代の建築のあり方に疑問を持ち始めます。パンフレットから引用すると、

「建築というものは建設費の10%が設計料なので、建築家は誰も10万円の家を建てようとしないんですよ。建築家は10万円で依頼されたら、建設費を15万円、20万円でと大きくしてしか生活できないんですよね、彼らは。
<中略>
そういうことをしてたら大きいビルを建てることでしか建築家の成功はないじゃないですかと。だから職業として始めから大きいものとか高いものを作るのが巨匠の仕事みたいになっている。」

一方、学生時代には多摩川のホームレスのおじさんに出会い、彼の家を見てこれも立派な建築なんじゃないかと思ったそう。それが彼の活動のきっかけとなったようです。

オルタナティブな価値を提示する


ここには単純な大きくなることがいいことだ、という高度経済成長時代の価値観風なものに対するオルタナティブな価値観の提示があるわけですが、こうした価値観の提示そのものが坂口さんのやりたいことなのでしょう。何か大きな価値観に対するオルタナティブ。
家は定住するもの、という価値観に対抗するモバイルハウス。大きなものを作るのが巨匠の仕事、という価値観に対抗するために身体の大きさから逆算した手作りハウスの建設。新政府の考えもおそらくその延長線上。日本という国家を運営する政府に対して坂口流のミニマリズムによる新政府(それを政府と呼ぶのはなぜなのかわからないのだが)。

映画は、坂口さんの講演、災害時に役立つ0円ハウスの作り方の実践講座、そして写真のついた二畳のモバイルハウスの建設を描きます。作品中ずっと感じるのはゲリラ的な路上生活を推奨するかのような活動とは裏腹な坂口さんの華やかさ。単純にイケメンであるし、トークも上手い。ファッションも奇抜でかなり目立つ。非常に強いタレント性を持っていて、ポップアーティストのような雰囲気を持っていますね。

映画の中心は多摩川に住んでいる「ロビンソン・クルーソー」と坂口さんが呼ぶ船越の助力でモバイルハウスを作る過程。船越さんの助力というか、彼が主導している面が強いのだが。材料はホームセンターで合計26000円。これで作った家を吉祥寺の駐車場に停めるらしい。
作業はひたすら船越さんの手際に良さが際立っています。的確で無駄がない。完全にスモールハウスを作る職人。たしかにこういう技術にも明らかに価値があるなと思います。人一人が暮らすのに必要最小限なものを、無駄を削ぎ落してテキパキと作るのも、確かに一般の建築の価値とは別の価値がある、船越さんの所作は思わせます。

モバイルハウスを多摩川で完成させて、実際に吉祥寺の駐車場まで運ぶのですが、実際には坂口さんがそこで暮らすことはなかったようです。というのも3.11が起きて、彼は熊本に移住してしまったので。なのでモバイルハウスによる生活の実践はこの映画では描かれません。家とはなんであって、住むとは根本的にはどういうことなのかをオルタナティブな方法で問い直すのが本来の目的だったのだと思うのですが、そうした問いは坂口さん自身の中にもあったことがパンフレットを読むと伺えます。

映画「モバイルハウスのつくりかた」より
映画「モバイルハウスのつくりかた」より

パンフレットに収録されている坂口さんと本田監督の対談の中で、坂口さんが映画には描かれていない駐車場を不動産屋から借りた時のエピソードを語っています。不動産屋さんにモバイルハウスの写真を見せて、家として住めるが、車輪をあるので車両になりますよね、と説明する中で最後に「坂口さん、住まないですよね」と聞かれたそうです。
これは割とこの作品のテーマに直接繋がりそうな問いです。住むってそもそもなんなのか、と。住まいの定義は実はないんだというようなことを同じ対談の中で坂口さんは言ってもいます。

住む、というのは、僕らにとっては当たり前中の当たり前のことすぎて、いちいち疑問を持つ事がない領域ですが、そういう部分こそ坂口さんが転換したい何かがあるのでしょうね。それを言葉よりもまず実践が先にくるようなタイプの人なんですな、坂口恭平って人は。

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