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オーガスト・ウォーズは超面白いプロパガンダ映画

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いきなり結論を書くと、この映画は超面白いプロパガンダ映画です。
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この映画「オーガスト・ウォーズ」、パシフィック・リムの向こうを張って、ロシア製ロボットアクション超大作のような宣伝のされ方だったが、全然違う。これはロシア軍全面協力の下に制作された戦争映画であり、物語も実際の2008年の南オセチア紛争をモデルにしています。この紛争は別名8月戦争と呼ばれており、これが映画のタイトルになっています。
デカいロボットは確かに登場しますが、これはメインキャラクターの少年の空想の中にしか存在しないもので、戦争に巻き込まれた少年がその現実から空想して生み出す産物にすぎません。
キャッチコピーである「その日世界は、ニつに分かれた」は現実に起こる戦争と、少年の空想の世界、と解釈することもできますし、対立するグルジアとロシアが対立する、ということで2つに分かれたとも解釈できます。

宣伝のせいで、もしかしたらこの映画をファンタジーロボット映画として見る方がいるかもしれませんが、中身は、さすがロシア軍全面協力というだけあって、細部の描写まで非常にリアルな戦争映画です。ロボット好きよりもミリタリー好きが喜ぶ映画ですね、これは。

重火器や小道具、衣装などもロシア軍が実際に使用しているものらしく、ディテールへのこだわりがすごい、と軍事考証に詳しい脚本家の鈴木貴昭さんも仰っているぐらい。

しかし、この映画完全にロシアのプロパガンダ。さすがロシア。旧ソ連の頃から、プロバガンダ作品は得意としていたので、まあこのぐらいはお手のもののというべきか。

物語は1人の母親が戦火に巻き込まれた息子を自ら救いに戦争の只中に飛び込んでいくというもの。南オセチアの平和維持軍の任務についている夫が電話をかけてきて、息子を自分の故郷の自然を体験させたいと申し出る。絶賛不倫中の母親は、南オセチアは危険なところだと知りつつも息子を夫に預けることにする。しかしタイミング悪く紛争が本当に勃発。南オセチアは紛争地帯となり、息子は孤立。
母親は自ら息子を救うために無認可バスに乗り、道中ロシア兵を含む様々な人の助けを借りながら、過酷な戦場を駆け抜け息子を救出する。

素人の母親が戦火に飛び込む、というのはあり得ないような話だが、プライベートライアンのように非常にリアリティのある戦場描写なので、かなり没入感がある。
そして母親に協力するロシア兵がほとんどいい奴(笑)なぜそんなに協力的で、みんな面白いやつらなんだというくらい。
なにせたった1人の少年を助けるために、ロシアの一部隊が無償で動いてくれるんです。すごい人道的ですね、ロシア軍(笑)

この紛争、当初はロシア側が仕掛けたとして国際的に非難されたが、後にそれは間違いであったことがわかったりと様々な情報が(国際的なパワーバランスが?)錯綜している。この映画の制作自体も情報戦の一環なのかもしれない。
グルジア側はというと、2011年に5デイズというハリウッド映画(レニー・ハーリン監督)の作品に全面協力している。これはアメリカ人ジャーナリストが、北京五輪に湧く国際舞台の裏側で、南オセチアではロシアによるグルジア人の虐殺が行われていたことを目撃する、という筋立てだが、ロシア側の言い分はほとんど出てこない。
そしてこの「オーガスト・ウォーズ」もグルジア側の言い分はほとんど出てこない。グルジア兵は映画の中ではほとんど、顔の見えない敵性分子、息子の助けたい母親の行く手を阻む障害としての役割しか与えられないません。
しかし、その辺は一応バランスを取ってますよ、というポーズを取るのも忘れていないのが上手い。最後の、母親が息子を連れて激しい戦場を脱出するシークエンスではグルジア兵も一度、母親を助けたりもする。こうして少しはグルジア側の良心も見せておくのがなんとも心憎いというか、周到というか。

しかし、この映画本当に面白い。戦闘シーンの重量感は昨今のハリウッド大作を凌駕するパワーを持っているし、VFX技術も相当に高い。脚本も娯楽作品としてよく練られている。

プロパガンダである、ということを念頭に置いて見ると、本当に面白い一級の娯楽映画です。
そうか、一見ロボットアクションぽく見せてるのもプロパガンダっぽく見せないための工夫なのか。

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