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喧々諤々の攻防の跡がハッキリ見えるウィキリークスのTPP知財関連草案リーク

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ウィキリークスがTPPの知的財産権分野の条文の草案とされる文書をリークしましたね。8月30日に開催されたブルネイラウンド時点のものとのこと。早速読んでみました。
Secret Trans-Pacific Partnership Agreement (TPP)

今までも米国側の知財要求案などはリークされたりしたことはありましたが、TPPの草案がリークされるのは初めてですかね。今回ウィキリークスが出してきた草案文書が本物であるかどうかは、僕には確認しようがありませんが、海外報道でも日本の報道でも真正性を問う内容は見られませんね。

内容は、今までも報道されていた争点のものが概ね確認できるといったところでしょうか。ああ、非親告罪化や法定賠償金、保護期間延長の問題など、今までも懸念点だとされていた部分がやはり含まれているのだな、と確認できます。

内容云々よりも今回のリーク文書では、各文案にどの国がどの部分に関して、賛成したり反対したりしているのか、勢力図がよくわかる点が大きいですね。知財分野はTPPの中でもかなり揉めている分野だと言われていましたが、改めてこれは相当に揉めまくっていて、どう転ぶのか余談を許さない状況なのだなと感じます。

保護期間の延長などは延長に賛成が6カ国、反対も6カ国とどちらに転ぶかわからない状況です。日本は反対側です。
http://wikileaks.org/tpp/#efmVPRVSs

提案側の基本は、著作者の死後70年に延長(メキシコは100年を主張してるんですね)、あるいは最初の発行・公開された年から95年間を保護期間とするアメリカの提案に対し、70年や75年にすべしという案がでていたりします。

日本は著作権の保護期間は、各国の法律で定めるべしという立場。

日本は非親告罪化に関しても、ベトナムと共に反対の立場。しかし賛成多数でここは厳しい情勢。賛成しているのは、アメリカ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、カナダ、メキシコ、オーストラリア、マレーシア、チリ、ブルネイの10カ国。
http://wikileaks.org/tpp/#efmiyDi1l

このように各項目の勢力図が細かく分かるのは、今後の関係団体の活動にかなりの影響を与えそうです。

しかし知財分野に関しては相当につばぜり合いやってるんだな、と読んでいてい思わされます。これは草案ですが、ほとんどまとまっていないような条文も散見されます。例えばこれ。1単語ごとに各国の賛成・反対が入り乱れているような状態です。草案だからこんなもんでしょうかという気もしますけど。
http://wikileaks.org/tpp/#efmh2Ah_f

5. [AU/NZ/SG/MY/ CA/US propose; PE/VN/BN/MX/CL oppose: [US/CA propose: Each] [US/CA oppose: A] Party [SG/NZ/CL oppose: shall] [SG/NZ/CL/JP: may] provide criminal procedures and penalties [US/CA oppose: , in appropriate cases,] for the [US/CA propose: knowing and] unauthorized copying [MY: or recording] [US propose; CA/JP oppose: or transmittal] of [US/CA propose: a [JP propose: first-run] cinematographic work, or any part thereof,] [US/CA oppose: cinematographic works] from a performance in a [CA oppose: motion picture exhibition facility generally open to the public] [CA/JP propose: movie theater].]

映画館での盗撮に関する条文ですね。なんとなくまとてみるととこんな短い文章なんですけどね。
Each Party shall provide criminal procedures and penalties for the unauthorized copying of propose: a cinematographic work, or any part thereof, from a performance in a movie theater.

カナダが「motion picture exhibition facility generally open to the public」という曖昧な表現に反対して、日本とともに「movie theater」という表現を提案してたりします。「基本的に公共に開かれている映像作品上映設備」だと適用範囲が無駄にでかそうなので、適用される場所や条件を具体的にしようということですね。映画館での盗撮行為に対して刑事訴訟や刑事罰を設けるようにしようという条文案ですが、録音(recording)や配信(transmittal)という文言も加えようとか、各国がいろいろ議論し合った跡が、生々しく残っていますね。

ザッと読んでみた印象ですが、日本政府はこの知財条項に関して、問題点を結構しっかりと把握して、反対すべき点はきっちり反対しているな、という印象です。
境真良さんもこうおっしゃっておりますが、同意。

日本政府の知財に関する態度はこれである程度わかってきて(意外と頑張っていて、非親告罪化などの適用範囲などでは反対側の論陣としてキーパーソンになるかも)、どの点を重点的に議論しアイデアを提案していくべきかの指針が出てきたことは、とても大きな意味を持つと思います。
やはりこういう大事な話ってできるだけ情報公開した上での議論が望ましいのだな、と改めて感じます。空を切るような危険論VS楽観論から抜け出して、具体的な線引き論等が可能になりますし。

喧々諤々とタイトルにも書きましたが、リーク文書を読む限り知財の交渉はこれから本格的に細部を詰めていく感じですので、引き続き重要論点は多くの議論をしていく必要がありそうです。

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