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是枝裕和が見出した才能、広瀬奈々子監督デビュー作『夜明け』を語る

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 1月18日から、柳楽優弥、小林薫主演の映画『夜明け』が公開される。

 監督は、これが長編映画初挑戦となる広瀬奈々子。是枝裕和監督と西川美和監督の設立した制作者集団「分福」出身で、両監督の監督助手を経て、自ら書き上げたオリジナル脚本でのデビューとなる。

 小さな田舎町で木工所を営む哲郎(小林薫)は、川辺で倒れていた青年(柳楽優弥)を見つけ介抱する。青年は偶然にも哲郎の亡き息子と同じ「シンイチ」と名乗った。行くあてのないシンイチを哲郎は家に泊め、木工所で働かせることにする。2人にはやがて父子の情愛に似た感情が芽生えるが、シンイチの秘めた過去が明らかになるにつれ、2人の関係は揺らぎ始める。

 
 プレミア上映となった東京フィルメックスではスペシャル・メンションを受賞。日本を代表する監督に見出された新しい才能は、1作目で高いポテンシャルを示した。

 そんな広瀬奈々子監督に作品とご自身について話を聞いた。

 

脚本は挫折しかけたけど現場は楽しくてしょうがなかった

広瀬奈々子監督

――長編映画監督デビューに至る経緯を教えてください。

広瀬奈々子(以下広瀬):私の企画が良かったということではなく(笑)、私がディレクターをやったウェブCMを是枝さんに高く評価してだいたんです。早く監督やったほうがいいと言ってくださり、提出した2本のプロットのうちの1つがこの企画だったんです。

 
――広瀬監督はいつごろから映画の道を志していたのですか。

広瀬:母の影響で小さい頃から映画をよく観ていました。高校の頃はヴィム・ヴェンダースやジム・ジャームッシュのようなオフビート系の作品が好きで、その頃から何らかの形で映画に携われたらいいなと思っていました。映像学科のある大学に進学して、大学時代はジャ・ジャンクーやイ・チャンドン、ホウ・シャオシェンなどのアジアの作家の映画をよく観るようになりましたね。

 
――是枝裕和監督や西川美和監督の監督助手を務めておられましたが、監督になってみて新たな発見はありましたか。

広瀬:監督助手というのは、是枝さんが作った独特のポジションで、助監督と違って監督にずっと付いて演出を見る役割です。助監督は現場のスケジュール管理や衣装、小道具の管理などが主な仕事で、演出を細かに見ることができません。私はこのポジションを3年やりました。具体的には、現場で違うと思った時に監督に耳打ちして現場を止める役割なんですが、他のスタッフは「またあいつ何か監督に言ってるぞ」と思っていたことでしょうね(笑)。

 監督になってみて、自分がいかにこれまで矢面に立ってこなかったのかを思い知りました。直接、スタッフの方や役者さんと対話して現場を作っていくのは、最初はプレッシャーを感じましたね。

 
――柳楽さんの演じたシンイチは、若い人の抱えた葛藤をリアルに体現しているなと思いました。このキャラクターをどのように作ったのですか。

広瀬:最初はシンイチを殺人犯に設定するなど、いろいろ試行錯誤しましたが、自分は事件を描きたいわけじゃないし、この映画もサスペンスではないんだと気づいて、自分自身に寄せていく作業をしました。普通の青年にした方がキャラクターの芯が出ると思ったので、その結果、控えめで一見従順だけど、反抗心も秘めているような、どこにでもいそうな青年になりました。柳楽さんのおかげで、今の状況から抜け出そうともがくようなエネルギーもでてきたなと思います。

(c)2019「夜明け」製作委員会

――制作時、一番大変だったことはなんですか。

広瀬:脚本はもう駄目だと何度も挫折しかけました。でも、現場は楽しくてしょうがなかったです。私は制約のある状況の方が好きなようで、その方が伸び伸びやれるみたいです。だからこそいつまでも直せる脚本はしんどかったですね。

 宣伝も大変です(笑)。元々口下手ですし、作品を作っておしまい、にはならないことも監督になって初めて実感しました。でも思いがけない感想をいただけたりして、こうやって作品が育っていくのか、と実感していますし面白い過程だなと思います。

 

対象を切り取るより、どう見つめるかを重視

――地方の木工所という、男臭い世界を舞台にしていますが、なぜこのような舞台を選んだのですか。

広瀬:結果的にこうなったという感じですね。社会の権威の象徴として哲郎がいて、それに従う従業員という構造を考えた時に、母と娘より、父と息子のような関係性を描く必要があると考えて男性社会が舞台になりました。

 
――男臭い世界の話ですが、男の柔らかい部分が非常に良く描けていると思いました。

広瀬:これは主役が柳楽優弥さんと小林薫さんだったのが大きいと思います。小林さんは単なる父性の強いだけの人じゃなくて、時に恋する乙女のような目をする時もあって(笑)、それがすごく素敵なんです。2人の関係が単なる依存だけじゃなく、理想的なものにもなったのはお2人のそういう部分が大きかったんじゃないかと思います。

(c)2019「夜明け」製作委員会

――今回、撮影監督の髙野大樹さんは、ドキュメンタリー畑の方で長編劇映画は今回が初めてです。なぜ髙野さんを起用したのですか。

広瀬:以前、ドキュメンタリー作品でご一緒したことがあって、被写体との距離感がいいなと思いました。グイグイいかずに奥ゆかしいというか、被写体に対する畏怖、リスペクトを感じる距離感を持っているんです。

 
――なんとなく、ケン・ローチ監督の距離感に近いなと思いました。もちろん、是枝監督の距離感にも近いですし、対象をどう見せるかより、どう見つめるかを重視しているのかなと。

広瀬:そうですね。対象を切り取るというより、見つめていくことを一番重視していました。

 

立ち止まって葛藤することを肯定したい

(c)2019「夜明け」製作委員会

――この映画は、夜明けに始まり、夜明けに終わり、タイトルも『夜明け』です。どうして「夜明け」なのでしょうか。

広瀬:まず大きなイメージとして、夜をさまよい歩くイメージがありまして、その夜がいつか明けてほしいという想いを込めてこのタイトルにしました。

 
――先にタイトルが決まっていたのですか。

広瀬:そうですね。そこからビジュアルが出てきた感じです。作品自体も未明というか、まだ夜が明けきってない作品だと思っているので。

 
――「未明」というのはどういう意味で未明なのでしょうか。

広瀬:シンイチがこれからどうすべきか、明確な答えが見つかったわけではないですし、彼はきっとこれからも悩み、葛藤すると思うんです。でも、誰かに従ってばかりではなく、自分の力で考えられるようになったことは大きな成長だと思いますし、答えが見つからないのもひとつの答えだと思います。立ち止まったり、葛藤したりすること自体を肯定するような、そんな映画にしたかったんです。

 

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