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『シン・ウルトラマン』の「トクサツ」概念について書きました

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 マグミクスに庵野秀明企画・脚本、樋口真嗣監督の『シン・ウルトラマン』について書きました。

 『シン・ウルトラマン』庵野秀明が追求した、概念としての「トクサツ」空間の魅力 | マグミクス

 昔の特撮番組の魅力を3DCGによって再帰的に表現することを目指している作品です。特撮は技術を指す言葉ですが、それの持つ魅力を抽出して別の技術で表現していく、技術ではなく概念としての「トクサツ」の魅力をはっきりと示そうという意欲があります。

 本物の空間ではないけど、ドローイングのアニメの魅力とも違う、中間的なものというか、嘘だけど本当でもあるトクサツ空間の面白さにあふれていました。

 作品のリアリティラインの目指すところが、普通のCG使った実写映画とは全然違います。その「物差し」の違いに気がつくと面白い作品になっています。同様の試みは『シン・ゴジラ』でもやっていましたね。

 特撮ジャンルは日本で独自に発展したものです。新しい技術に取って代わられたとしてもその魅力そのものは引き継いだ方がいいですよね。こういう試みをする人が庵野氏以外にも出てきてほしいなと思います。
 
 
 以下、原稿作成時のメモと構成案。
 
 
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技術としての特撮ではなく、概念としての「トクサツ」空間
技術は9割方CGを使っているので。

ミニチュア感覚をCGで作るという挑戦の延長線・・・序・破・シン・ゴジラ・シン・エヴァのその先

本物の空間とも、アニメの虚構空間とも違う、3つ目の空間としての「トクサツ」空間

これは古いようで新しいものでは。。。。現代映画にはない
かつての技術的・予算的限界ゆえに副次的に生まれた空間の魅力を再帰的に生み出す

庵野秀明の言葉では「現実の中に虚構が交じる」空間・・・とことんリアルなだけでない面白さ

どう見ても現実にはありえない遠近感のカットがある。長澤まさみが屋上にいてウルトラマンが怪獣を抱えて飛び立つ時に振り向くカット
動きがあえてスローなところ
スーツのシワとも体表の特徴とも言える微妙なさじ加減の表面の表現

「物差し」が違うということ。

リアリティラインをどうするかという問題・・・芝居も含めて

Thesis 概念としての「トクサツ」空間は出現したか

Point2つ
特撮の歴史と庵野秀明の追求してきたもの
CGをミニチュア風にする、技術としての特撮ではなく、感性としての「トクサツ」を別の技術で再帰的に再現。。。実景でも虚構のアニメ映像とも違う、空間の感覚を生み出す

Intro
庵野秀明総監修のシン・ウルトラマンが公開された。

公開初週はシン・ゴジラを超えるヒットに。
毎回、多くの議論を起こす庵野秀明は今回は現場で陣頭指揮は取っていないが、彼の狙いや感性はそれなりに色濃く反映されていると言っていい。

本作は彼が愛を注ぐ「特撮」の魅力を再帰的に示すもの。それは長年、追求してきたものだ。それは技術への偏愛だけでは決してなく、あらたに概念としての「トクサツ」空間を生み出すという試み。とても批評的な試み

本物ではない、しかし、完全に虚構でもない、トクサツ独自の魅力を新たに打ち立てることこそ、本作を含めた庵野の活動にはある。

Body1 庵野秀明にとっての「トクサツ」とは
現実と虚構が混ざりあったもの・・・本物の風景や人の中に虚構がまざっている。100%本物とも100%虚構とも違うもの

現実の中に描ける夢の映像。人間が創造の空間の中にいる違和感の面白さ(『巨神兵東京に現る』2012年7月5日刊行、日本テレビ放送網株式会社、『館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』別冊、P9)
特撮は、現実感の中にアニメと同じ発想の「現実にはないイメージ」を紛れ込ませることができるんですね。現実を切り取った空間の中に、現実ではない空想を融合させられるんです。その異種感覚というのはすごくいいなと。(『巨神兵東京に現る』2012年7月5日刊行、日本テレビ放送網株式会社、『館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』別冊、P10)
庵野:特撮だけが描けるんですよ、現実と虚構が融合した世界観を。だから本作も最大の主題として、そこを描こうとしています。(『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』、株式会社カラー刊行、P500、庵野秀明)


その感覚を追求し続けてきた
アートオブシンゴジラや、エヴァ序や破の証言を参照

鬼塚:そのせいか、僕たちとしては「これはCG的にどうかな?」って思うカットでも、「特撮的にOK!」となるようなことはいっぱいありましたね。車が倒れたり落ちたりするカットで、たとえ挙動が軽く見えてしまっても、「ミニチュアっぽさが出てて、グー!」とか。
鬼塚:通常、CGに求められるものとは、「どうやって現実らしく見せるか」という方向のリアリティなんです。そうではなく「特撮の世界をどうやってCGで再現するか」みたいな方向性なんですね。(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 全記録全集』、株式会社カラー発行、2008年7月刊行、P386、鬼塚大輔、小林浩康)

庵野:戦闘シーンの画面レイアウトでは「特撮」的な感覚を意識しています。ここはセットでホリゾント抜け、これは実景にセットを合成、こっちはフロントプロジェクション、などとイメージして描いていますね。なので、カットによってはパースやスケールをあえて無視してるところもあります。(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 全記録全集』、株式会社カラー発行、P232、2010年8月刊行、庵野秀明)

宮城:庵野さんは、プリヴィズで仕事が納得できるまで動きやアングルを詰めていたので、いざ本番のCGが出来上がってくると、上がった精度に違和感を覚えたのか、プリヴィズに戻して下さいという指示を出すことが結構ありました。プリヴィズでのCGは、たとえばゴジラひとつとっても、可動部が少なく、動きもかなり簡略された作りになっています。(『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』、株式会社カラー刊行、P232、宮城)

熊本:どうもこの異様な動きが、今回の庵野さんの狙いと合致したみたいなのです。<中略> この動きは自分にとっては、あくまでコンセプトであって、その後のアニメーションを作る過程で、もっとクオリティがアップされるおんが前提になっているんです。なので、本番のCG制作の実作業に入ったところで、良かれと思って、拙いながらも、バレのないように少しプリヴィズのものから作り込んでいったのですが、庵野さんの記憶力がものすごくて、わずかなパーツの違いとか、ほとんどミリ単位の動きのズレとかを一発で見抜かれてしまう。(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 全記録全集』、株式会社カラー発行、P235、2010年8月刊行、熊本)

Body2 このシン・ウルトラマン
基本的な方向性は一緒

実写を想定しているCGIの映像には、まだ空気感が足りない感じがします。僕はそこになにか違和感を感じるのかもしれません。(『巨神兵東京に現る』2012年7月5日刊行、日本テレビ放送網株式会社、『館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』別冊、P11)

合成画面とか光学作画のシーンとかが特に好きな場面でしたね。実際にはあり得ないビジュアルというのに惹かれたんだと思います。

おかしな遠近感のカット
動きのスローな巨人と怪獣
着ぐるみのシワとも見えるような表面
合成されたアニメーション

モーションアクターに古谷さんを起用している。。。本物のウルトラマンの動きを知る人に頼むこと。。。それをさらにCGにて再現していくこと

ミニチュアなどの古い特撮技術が廃れた決定的な要因は、CGの技術発展だ。ミニチュアよりも結局、高度なCGの方が「現実」に見えるから取って替わられてしまったわけだが、庵野氏は「現実」には見えなくてよいが、「特撮」には見えてほしいと発想した。実写とアニメを越境したからこそ、その間にある別位相の魅力に気がつけたのかもしれない。あるいは、庵野氏の心象風景は元々そこにあったのだろうか。『エヴァ』への帰還とアニメと実写の間の「第3の空間」|Real Sound|リアルサウンド 映画部

そこには、概念としてのトクサツ空間がある。それは、リアルとも単に非リアルとも異なる微妙な感覚がある。
3つ目の空間はできたか

それは既存の映像にはないもの。。。古いようで実は新しいもの

特撮という技術自体は、本物に近づけるための技術だったけど、当時の技術や予算、製作条件の限界によって本物と虚構の中間地点にとどまってしまった。

技術が発展してその中間地点が忘れ去られた。。。それを再び、本物とも虚構とも違う、別の魅力を持ったものとしてとらえ直すという、すごく新鮮な態度。。。ただの懐古趣味ではないところがある。

どうしてトクサツ空間にこだわるのか
それは、庵野氏の好みというほかないが、そこには映像の進化の歴史的にかなり意義のあることでもある。基本的に映像は現実を切り取ったものという前提だった。なので、VFX技術も現実に擬態できるtこを目標になることが圧倒的に多い。
今のアンリアルエンジン5のデモ映像なんかはその究極
でも別の価値観、別の物差しで映像を作ってもいいのではないか。そこに作り物100%のアニメとも、本物の実景映像とも違う、3つ目の空間としてトクサツ空間がある。
これは、実は古いようでいて、新しいことでもある。
まだ志半ばだと思う。
技術としての特撮ではなく、概念としての、現実と虚構の狭間の「トクサツ」空間の感性は続編か。
3部作構想があるようなので、期待しましょう。
 
 

以前書いたこの原稿の続きのようなイメージで。
『シン・エヴァ』ラストカットの奇妙さの正体とは 庵野秀明が追い続けた“虚構と現実”の境界|Real Sound|リアルサウンド 映画部

その他メモ
【独占】樋口真嗣監督に聞く、庵野秀明氏とシン・ウルトラマンで目指す「断絶の解消」 |ビジネス+IT
 
 
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メモ終わり。

 以前リアルサウンド映画部の連載で書いた原稿でも同様の指摘をしていましたが、その発展型というか、続編的な内容になっていると思います。実写ともアニメとも異なる「トクサツ」空間の追求、庵野氏の最近の狙いはここですよね。これはきちんと確立できるととてもおもしろいものになるはずです。
 
 
 次に公開されるのは『シン・仮面ライダー』ですが、この作品でも同様の方向性を模索するのかなと思います。こちらも期待でしています。
 
 
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