Protect IP法案は、ネットの自由とイノベーションを殺すか?
最近、アメリカのIT業界が一つの法案を巡ってすったもんだしてます。
5月12日に上院議員Patrick Leahyによって提出されたProtect IP Actというこの法案、中身はと言うと、要点をまとめるとこんな感じ。
- 司法省は著作物を侵害、あるいは法に触れる悪質なウェブサイトへのあらゆるディレクトリ、information location toolsを削除するよう要求する権限を持つ。
- DNSプロバイダーは、指定された悪質なウェブサイトのブラックリスト作成し、アクセスを遮断せねばならない。
- さらに著作権保持者は、特定のウェブサイトへのアクセスをブロックを命じるよう裁判所に要求できる。
参照リンク
http://www.usv.com/2011/06/the-protect-ip-act-will-slow-start-up-innovation.php
http://en.wikipedia.org/wiki/Protect_IP_Act
この法案の「目的」は、違法海賊版の撲滅、特に現行の法で裁けないような海外のサーバーを使っているようなサイトであるのですが、著作権侵害しているウェブサイトの定義が曖昧であること、ネットの自由な言論を封殺する「副作用」が出る恐れが強いことなどから、ネット関連企業や、団体などから大きな反対の声が上がっています。Googleを筆頭にYahoo、eBay、電子フロンティア財団、超有名な50ものベンチャーキャピタリストたち、American Express、 Reporters Without Borders(国境なき記者団)、人権団体のHuman Rights Watch、NYTimes、さらにはハリウッドのお膝元の新聞社LATimesまで反対を表明しています。
反対にこれを支持しているのは誰かというと、MPAA(米国映画協会)、RIAA(全米レコード協会)を始めとする娯楽産業。主だった団体は、AFM(アメリカ・カナダ音楽家連盟)、DGA(全米監督協会)、SAG(映画俳優協会)など、アメリカ娯楽産業の主要団体が軒並み支持を表明しています。http://techland.time.com/2011/06/24/will-protect-ip-act-stop-piracy-or-doom-online-innovation/
この法案が万一、通過し、施行されることになれば、司法省の指定する「有害で著作物を侵害しているウェブサイト」へのあらゆるディレクトリ、インデックス、ポインター、ハイパーリンク、全ての導線が削除、あるいは停止されることになります。例えば裁判所は、違法ダウンロードを提供するウェブサイトを検索結果に出さないようにインデックスを検索エンジン会社に要求できます。DNSプロバイダーに指定のウェブサイトへのリンクは全てブロックするよう要求もできます。さらに映画会社が特定のサイトを著作権侵害だと裁判所に訴え出れば、そのサイトはブラックリストに登録され、誰の目にも見えなくなります。
この法は、アメリカのネットの言論の自由を奪うだけではおそらくすまなくて、アメリカのネットの鎖国化を生み、グローバル経済の中での地位低下を生む可能性があります。その危険性を訴え上院議員、Ron Wydenはこの法案を差し止め要求しています。
ハリウッドとシリコンバレーの間により一層の深い溝ができる?
IT先進国であるアメリカの象徴シリコンバレー、そして世界一の映画産業(著作権産業)であるハリウッド。両者の溝はこの法案をきっかけにより深いものになる可能性があります。議会がハリウッドに味方し鎖国の道を選ぶか、シリコンバレーを取って自由でオープンな方向に進むのか非常に注目です。
この法案に反対の人は、このサイトから反対訴える署名が出来ます。
http://act.demandprogress.org/sign/protectip_docs/
ここのサイトでは、支持か反対かのオンライン投票をやってます。
https://www.popvox.com/bills/us/112/s968
余談ですが、マイクロソフトはなぜかこの法案を支持する声明を出しています。検索エンジンのBingを運営している会社とは思えない対応ですが、何考えてんでしょうか。http://goo.gl/3Pj3P