こういう反応は当然あるのだが、過剰な自粛は止めてほしい。
米小学校銃乱射事件でビリー・クリスタルのプレミアも延期 打ち切りになるテレビ番組も – シネマトゥデイ
14日にアメリカ・コネティカット州の小学校で発生した銃乱射事件の影響を考慮し、ビリー・クリスタルとベット・ミドラーの新作映画『パレンタル・ガイダンス(原題) / Parental Guidance』のプレミアが延期されることになった。
(中略)
テレビ界では、内容が配慮を欠く可能性があるとして、FOXがアニメ「ファミリー・ガイ(原題) / Family Guy」と、コメディードラマ「アメリカン・ダッド!(原題) / American Dad!」の新エピソードの放送を中止。ケーブル局のSyfyはテレビドラマ「ヘイヴン-謎の潜む町-」の新エピソードが暴力的内容であるとの理由で放送を延期している。
アメリカは銃規制の議論になると、なぜか銃規制の前に表現規制の話になってしまう。
今回プレミア上映の延期が決まったビリー・クリスタル主演のParental Guidanceはコメディ映画なのだが、あらすじはこのような感じ。
アーティ(ビリー・クリスタル)とダイアン(ベット・ミドラー)は仕事で街を離れる娘から三人の子供を預かってくれと頼まれ引き受けが、21世紀の現代っ子の三人の孫たちにオールドスクールな昔ながらのしつけ方法を実践しようとする2人は手を焼くという、オールドスクールVSニュースクールのギャップを描くファミリーコメディ映画。
予告編はこちら。作品のディテールまでわからないのだが、あらすじと予告編を見る限り銃乱射事件で自粛する必要のある作品とも思えない。
ざっくり言うと家族の絆を描いた作品だと思うが、多くの子供の命が失う事件に哀しみの意を表するということなんだろうか。
ハリウッドリポーターによると、FOXの広報は以下のようにコメントしているそうだ。
“The hearts of all involved with this film go out to the victims, their families, their community, and our entire nation in mourning.”
「この映画に関わる全ての者の心は犠牲者、そのご家族、地域、そして国全体と共に喪に服します」
この映画は、プレミア上映を中止しただけで一般劇場での公開が中止になったわけではないからまだいいのかもしれない。しかし、テレビの方えは放送中止になったエピソードも出てきてしまっている。
上述のシネマトゥデイの記事ではディスカバリー・チャンネルの銃を製造する家族を追ったリアリティー番組「アメリカン・ガンズ(原題) / American Guns」の放送を中止したそうだ。
これ銃の製造というか面白おかしく銃をカスタマイズする家族の話で、たしかに予告編を見ただけでもかなり危ない番組だとは思うが。。。
しかし、これはリアリティ番組であり、フィクションではない。要するにこの家族は実在する。規制すべきは表現の方か、この家族の行いなのか。
via American Guns : Discovery Channel
銃器規制反対派に人気の共和党寄りのメディアであるFOXニュースでもこの番組の中止は報じられている。
俳優ジェイミー・フォックスが娯楽産業は実際の暴力事件に対して責任があり、表現が事件に影響を与えていると主張を紹介したあと、そうした意見に批判的なクエンティン・タランティーノを批判している。
Discovery hit ‘American Guns’ canceled as Hollywood wrestles with links to gun violence | Fox News
暴力行為や性行為に関するメディアの影響はクラッバーの限定効果説ですでに十分な答えになると思うが、こうしてメディアの強い影響を訴える人たちは、なぜ身近に銃が存在する環境から受ける影響には何も言わないのだろう。
いい加減アメリカは銃規制の議論を本格化させないといけないし、娯楽産業がその議論で果たす役割は大きい。なぜなら銃規制反対派は、表現の悪影響を隠れ蓑にその議論のテーブルに着くことを避けているからだ。
今はとてもデリケートな時期なのはよくわかる。けれでも彼らを引きずりだすためには、娯楽産業は半端な対応をしない方がいいんじゃないか。妙な形でスケープゴートに利用されるだけじゃないだろうか(アメリカン・ガンズの放送を続けるべきかは、難しい判断ではあると思うが)
コロラドの映画館での銃乱射事件と時にも同様の主旨のことを書いたが、不毛な表現規制はもう止めさせて、きちんと銃規制議論をするべきだろう。
ダークナイト・ライジング銃乱射事件。不毛な表現規制ではなく、銃と銃を手放せない社会をどうするのかの議論を
こうした事件が起きるたびに、政府高官は「~今日は政治な議論をすべき時ではなく、哀しみを分かち合うべき」という類のコメントをする。
そう言い続けてもう何年になるのか。
慶應義塾大学出版会
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