大晦日ということで、ご多分に漏れず今年の総括でもしましょうかね。
このブログの主なテーマは3つで、映画・テレビ・著作権に関わるニュースやビジネスでの新たな展開を紹介したり、分析したりというブログなので、3つそれぞれに総括のエントリーを書こうかなと思います。
3つも書いてるうちに年を超しちゃいそうな感じもしますが、まあいいでしょう。
さて、まずは映画の総括から行きたいと思います。
まずは僕の見た映画ベスト5でも上げてみます。邦画で5つ、日本以外の映画から5つで別々にランクをつけます。本来映画のランク付けとか星の数で評価するのはあまり好きではないのですが、たまにはいいかな、と。
まず洋画のベスト5から行きますよ。
洋画5位:ハンガーゲーム
レビューはこちら。
ショービジネス国家アメリカのリアルな姿か人の本質か。映画レビュー「ハンガーゲーム」
日本では鳴かず飛ばずで評判も売り上げも良くなかったですが、アメリカのショービズ根性の根深さを見事に浮き彫りにしている作品でした。なぜか日本ではバトル・ロワイヤルの二番煎じという云われ方をしてしまいましたが、全然違うと思いますけどね。
この映画の優れた点は、強い生き残りのではなく、観客を魅了した奴が生き残るとしたところ。高度にメディア化した現代では本当の実力者よりもメディアパフォーマンスに優れた人間が上に行けるようになってると思いませんか?
そういう視点でこの映画を見るととても示唆に富んだ作品だとおもいます。
洋画4位:アルゴ
まだレビューを書いていません。すいません。おそらく年始に書きます。
追記:レビュー書きました。
外交危機すらショービズマインドで乗り切るアメリカ。映画レビュー「アルゴ」
この映画はハンガーゲームとセットで見ると面白いかもしれません。アメリカという国は政治や外交という国家の深い部分ですら、ショービズの力で動いているんだということがよくわかると思います。ニセの映画作りで人質を救出というのスゴい実話を元にした作品ですが、まさにハンガーゲームが提示するような、ショービジネスの倫理感で動くアメリカ人ならではの発想がここにはあると思います。
洋画3位:ダークナイト・ライジング
レビューはこちら。
スクリーンにバットマンがいる希望、現実にはいない絶望。映画レビュー「ダークナイト・ライジング」
インターネット化による民衆の力が叫ばれるご時世に、ノーランがディケンズの二都物語を持ってくるというのは、彼のある種のバランス感覚を良く示しているような気がします。
前作「ダークナイト」と比較してしまっては見劣りするかもしれませんが、前作の完成度が高すぎたようにも思いますし、あんな空前絶後の傑作が二回続いたら神すぎます。前作ほどではなくともライジングも強烈なインパクトを残す作品でした。
洋画2位:灼熱の魂
レビュー書いてません。すいません。スゴすぎて書けなかった。。。。
驚愕の傑作でした。奇蹟レベルの作劇力。1最初のシーンのカメラ目線の少年のこの世の全てを憎むかのような視線でいきなり鷲掴みにされ、最後まで全く飽きさせないその構成力は見事。人間の業とはかくも深いものなのかと思い知らされる傑作でした。
レディオヘッドのYou and Whose Armyが耳から離れない。
洋画1位:別離
これもレビュー書いてません。挑もうとしたけど、見た当時スゴすぎて頭の整理がつかなかったんですね。見返す機会があったら必ずその時にレビューを書きたいと思ってます。
物語の筋立てはいたってシンプル。そこに人間のエゴやら自己保身やらイランの社会状況やら愛情やら複雑に入り乱れて、それが「嘘」となって吐き出されていく。人間を良く知る人だけが作りうる本当の傑作映画というのはこういうものだな、と深く感心したしました。というかこの監督の見事な作劇に戦慄しました。
その他、少年と自転車、ピナ・バウシュ、ルート・アイリッシュ、オレンジと太陽、スカイフォールなど良い作品はほかにもたくさんありましたね。
さて、ここから日本映画です。
邦画5位:相馬看花
レビューはこちら。
被災者と向き合った人の記録。映画レビュー「相馬看花 ―第一部 奪われた土地の記憶―」
南相馬の映画館「あさひ座」で見たという鑑賞体験の素晴らしさもあるのですが、この南相馬の人々を捉えたドキュメンタリー映画は凡百の被災地ドキュメンタリーとは一線を画していました。端的に云うと、この映画は南相馬に生きる人々を撮っていて、「被災者」を撮っていないのです。
被災地というブランドではなく、歴史ある土地としての相馬を描こうと務めているし、被災者というかわいそうな被害者でなかく、泣いたり笑ったりする当たり前の人間を描こうとする監督の姿勢に非常に共感いたしました。
邦画4位:SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者
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巷溢れるクソ綺麗事よりも、遥かに見る人を勇気づける裸の心のライム。映画レビュー「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」
シリーズ3作目にして、最高傑作でした。綺麗事のハッピーエンドよりも何十倍も生きる希望を与えてくれますよ、こういう映画は。
世の中勝ち組だけじゃない。それどころか日本にはこれからますます負け組が増えていくんだろうけど、入江悠監督みたいな人がいてくれることが希望です。この人だけは負け犬だからといって見捨てたりしない。
邦画3位:おおかみこどもの雨と雪
レビューはこちら。
絶賛以外の選択肢なし。映画レビュー「おおかみこどもの雨と雪」
細田監督が宮崎駿を過去の人にできそうですね。これは隣のトトロなどの一連のジブリの名作に匹敵する傑作でした。この暖かく、幸せな空間、アニメっていいなって思いました。最初の草原のシーンのカットバックで涙腺崩壊でした。
邦画2位:桐島、部活やめるってよ
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青春のメタ批評と神の不在。映画レビュー「桐島、部活やめるってよ」
青春て以外とつまんないよね、ホントは。青春が輝いているというのは桐島という神がいてこそのフィクションでしかないんじゃないの、宗教がフィクションであるのと一緒でさ、という作品。そんなメタ的なポジションから青春を批評するこの映画。もうそんなフィクションは始めから否定してゾンビのように生きるのも悪くないかもねえ。
邦画1位:劇場版魔法少女 まどかマギカ
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時代を刻印した傑作。映画レビュー「劇場版魔法少女 まどかマギカ」
元々、テレビ版の再構成という位置づけなので、除外しようかとも思いましたが、入れる事にしました。そして入れたら邦画1位ですよ、こんなん。しょうがないです、こんな大傑作無視できるはずもない。
これ以上ないというくらい時代を刻印された一本でした。
その他、ヒミズ、希望の国、KOTOKO、のぼうの城など面白い映画がたくさんありました。
しかし、洋画、邦画ともに見逃した作品も多数あります。悔しいですね、ホント。来年からはもっと時間の使い方を有効にしてたくさんの映画を見たいなと思います。
しかし、今年の日本の映画業界は観客動員も落ち込み、邦高洋低の傾向がさらに顕著になりました。そして相次ぐミニシアターの閉館、デジタル上映の問題、文化庁の助成金の使われ方や違法ダウンロードと共に施行されたDVDのリッピング規制など映画ビジネスに関わる部分でもたくさんの動きがありました。
映画というオールドメディアも今岐路に立たされていて、どういう方向に向かっていくべきなのかしっかり考えないといけないですね。
僕個人の問題意識としては、映画の魅力は損なわれておらず、そうした映画の魅力を伝えるメディアの不在が問題というところにあります。
新しい動きを育てることのできるプラットフォームと育てる意識を持ったメディアの確率が急務かなと思います。
一言でいうと映画のテッククランチが欲しいのです。
どうやったらそういうメディアを作れますかね。来年以降の課題です。
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