僕個人のベスト5など、特に社会の中で意味なんてありませんが、それでもこういうのは言いたくなるのが人情。
今年もたくさんの映画も見ることができました。素晴らしい作品に毎年出会えるのは嬉しい限りです。
特に今年は、もしかして後に映画史を振り返って重要だと言われることになるかもしれない作品もありました。ビジネスとしては難しい局面に差し掛かる映画ですが、その娯楽としての力強さはいまだに進化してることが確認できたのがなにより嬉しかったですね。
さて、それでは洋画と邦画に分けてベスト5を発表。
洋画編
5位:ザ・マスター
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映画レビュー『ザ・マスター』
ポール・トーマス・アンダーソンはすげえなと。65mmフィルムで撮影された映像も美しい。
4位:パシフィック・リム
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映画レビュー『パシフィック・リム』超面白い。以上。
ハリウッドでは今年、この映画の監督、ギレルモ・デル・トロとアルフォンソ・キュアロンの2人のメキシコ出身の監督が大きな存在感を放ちました。日本のサブカルチャーのエッセンスを違和感なくハリウッドの超大作に仕上げたこの作品。日本のファンの夢を海の向こうで叶えられてしまい、悔しくも嬉しくもあるそんな映画。続編やってほしいですねえ。
3位:ジャンゴ 繋がれざる者
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映画レビュー「ジャンゴ 繋がれざる者」- 映画の罪のみそぎ。
タランティーノの最高傑作と思いました。タランティーノの映画の偏愛ぶりは有名ですが、彼が影響を受けてきた諸ジャンルは、米国と映画の歴史の歪みの産物でもあることを彼はよくわかっていますね。
白人支配のイメージを作った西部劇。黒人差別の象徴のブラックスプロイテーション映画。両方を掛け合わせた本当のアメリカ史に迫る真面目な部分もありながら、徹頭徹尾娯楽映画。國民の創生から始まる長編映画の歴史とその映画が生んだ歪みを正した。これはアメリカ映画史的に重要な作品と言われるようになるかもしれない。
2位:セデック・バレ
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セデック・バレは、失われた民族の誇りも業も描くすさまじい映画
台湾の若きウェイ・ダージョン監督の超大作。1部、2部合わせて4時間36分の大長編。でもまったく飽きずにスクリーンに釘付けにされる。失われた民族や文明を描く作品はえてして、美しさを強調しがちですが、この映画は違います。
セデック族の誇りは十分に尊重しながらも、彼らの武装蜂起を業としても描いていています。その成熟した歴史感覚。
1位:ゼロ・グラビティ
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「ゼロ・グラビティ」レビュー、映画館の暗闇と宇宙の暗闇がリンクした極上の感動体験
偉業。映画ってこういうもの。映画館の暗闇は人にとって非日常で、違う世界を体験させてくれるものだとすれば、この映画ほどそれを徹底した作品もない。3D技術はこの映画のために開発されたのかと思えるほどに、ナチュラルで眼前の映像世界に溶け込むような感覚。映画はまた1つ進化したと思った。
邦画編
5位:あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
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映画レビュー「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」映画と一緒に想い出がスクリーンに映る
このアニメ映画の監督、長井龍雪と脚本の岡田麿里は素晴らしい才能の持ち主。映画版は半分総集編のような感じだけど、淡々と描かれる1年後のエピソードにキャラクター達のたしかな歩みが感じられる。見た人それぞれが自分の人生を思わず振り返るような映画。
4位:フラッシュバックメモリーズ
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フラッシュバックメモリーズ3Dレビュー、甦る過去も記録する斬新なドキュメンタリー
ゼロ・グラビティの3Dが自然さを追求したのに対して、このドキュメンタリー映画は3Dの違和感を積極的に利用した。ビデオ映像の流れるスクリーンを背にディジュリドゥを演奏するGOMAさんが浮き上がる。それが失った記憶が身体に染み込んだ演奏によって走馬灯のように記憶が甦ってくるかのように見える。3Dの使い方にもいろんなやり方をあることを示した1品。
現在だけでなく過去も記録しようとした意欲作。
3位:立候補
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映画レビュー「立候補」、泡沫が示す民主主義のかたち。
マック赤坂を始めとする飛沫候補を追ったドキュメンタリー映画。抱腹絶倒だが、最後は熱い感動が待っている。飛沫候補とバカにされる彼らだが、そのバカにされるスタートラインにも立たずにこの国の政治を嗤うな、という強烈なメッセージ。ラストは圧巻。
2位:魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語
SME (2013-11-06)
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魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語レビュー。なぜ悪魔は世界に必要か。【ネタバレあり】
正直、見る前はファンサービスに終始するかと思ってた。テレビ版であれだけ見事に完結しているので、付け足すものもないだろうと。でも全然違った、全く蛇足感はなく作り手の意地を感じた。
テレビ版が神の誕生で今回は悪魔の誕生。強烈なビジュアルの洪水の陶酔感。虚淵玄の脚本も見事。考えてみれば悪魔の誕生は必然だったかも。
1位:かぐや姫の物語
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かぐや姫の物語レビュー、超大御所のラディカルな挑戦はジブリ屈指の名作を生んだ
アニメってこんなに美しいものかと心底感動した。今年最高の1本はこれ。スタジオジブリの最高傑作にして高畑勲監督の集大成。
その他よかった映画
この他よかった映画たち。
邦画:天に栄える村、凶悪、そして父になる、タリウム少女の毒殺日記、祭の馬
洋画:レ・ミゼラブル、キャプテン・フィリップス、クロニクル、アルゴ、あの頃、君を追いかけた
こんなとこでしょうかね。ゼロ・グラビティとかぐや姫の物語、ともに映画とアニメを進化させようというラディカルなチャレンジ精神が見られる作品でした。こういう作家がいなくならない限り映画は死なないんじゃないかな。
それに対して、日本映画の実写劇作品が一本もベスト5に入らなかった。昨年は桐島のようなすごい作品もあったのですが、いや今年もいい実写映画ありましたが、すげえ!ってなるような作品には出会わなかったかな。
映画業界全体としては難しい1年になりました。宮崎駿監督が引退し、確実に客の入るブランドが消失しました。来年以降のスタジオジブリがどうなるのかいろんな意味で注目しています。
そして洋画の注目作ですらなかなか興行が厳しいという状況が今年もつづきました。テッドが例外的にヒットを飛ばしましたが、洋画のマーケティングが一度全面的に見直す必要がありそうな気がします。
ミニシアターの閉館も相次ぎました。映画館は全面的にシネコンの時代かもしれません。でも早稲田松竹とか三軒茶屋の映画館のような名画座的なとこも頑張っています。
娯楽も人の趣味も多様化する中で映画がどんなポジションを獲得していくのか、映画でなくては、映画館でなくては体験できないコンテンツ消費体験ということをしっかり突き詰めて考えていかないといけませんね。