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『ナチュラルウーマン』主演。トランスジェンダー女優、ダニエラ・ヴェガインタビュー

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 チリのトランスジェンダー女優、ダニエラ・ヴェガ主演の『ナチュラルウーマン』が2月24日より公開される。

 ダニエラが演じるのは、トランスジェンダーの女性、マリーナ。年上の恋人を亡くし、彼の葬式に参加しようとするも、偏見を持った遺族に妨害されてしまう。その他、多くの困難が彼女を襲うが、決して折れず前を向いて生きる姿を描いた秀作だ。

 ダニエラ・ヴェガは本作の演技が高く評価され、国内外の映画祭で主演女優賞を受賞。トランスジェンダー自身がその役を演じたことでも大きく注目された本作だが、本人の胸中はどうなのだろうか。来日したダニエラ・ヴェガに話を聞いた。

女やトランスジェンダーである前に、マリーナは人間

(C)mitsuhiro YOSHIDA/color field

——主人公のマリーナとあなたには共通する部分はありますか。またトランスジェンダーの役をやることについて、ご自身もそうであるからこそ難しいと感じた点はあったでしょうか。

ダニエラ・ヴェガ(以下ダニエラ):演じる役が女か男ということは関係なく、どんな俳優でも自分の体験を基にして役作りをすると思います。それに女優が女の役しかやらないかと言えばそんなことはありません。それは私も同じです。トランスジェンダーがトランスジェンダーを演じるから簡単だとか、難しいとかそういうことは考えませんでした。
マリーナは、尊厳と粘り強さと反逆性を備えています。映画はマリーナの人生を描いていますが、私が体験してきたものとは違います。
私は私の人生を生きています。私はだれかの妹であり娘であり、だれかの友人であり恋人です。

 
——マリーナの恋人役、オルランド(フランシスコ・レイエス)についてどう思われますか。2人が支え合う関係性についてどのように感じて演じられましたか。

ダニエラ:本当に美しいカップルだと思います。この愛情物語が美しいのは、この物語がすぐに終わってしまうからですね。こういう美しい愛のシーンをフランシスコ・レイエスのような素晴らしい俳優と演じられたことにすごく感謝しています。彼は日本では知られていないかもしれませんが、チリでは35年間人気TVシリーズなどで活躍した俳優で、自分が生まれる前から活躍している国民的俳優なんです。

(C)2017 ASESORIAS Y PRODUCCIONES FABULA LIMITADA; PARTICIPANT PANAMERICA, LCC; KOMPLIZEN FILM GMBH; SETEMBRO CINE, SLU; AND LELIO Y MAZA LIMITADA

 
——映画の中には幾人も偏見を持った人間が出てきますが、マリーナは強さを失わずに生きていくのが感動的です。

ダニエラ:マリーナは、オルランドの元妻や息子がなぜ自分に対して冷たく当たるのかがわかってるんです。彼らにとってマリーナは恐怖であって、マリーナはそのことがよくわかってしまっていて、偏見を持つ彼ら自身もおそらくそれを悪いことだと感じていることもわかっているのでしょう。マリーナは共感能力がとても高いと言えると思います。

 
——映画の中のある台詞についての質問です。マリーナは「君は何者だ」、「君はどっちなんだ」と質問された時に、必ず「人間だ」と返答します。この返し方にマリーナらしさをとても感じます。この台詞をどんな風に解釈していますか。

ダニエラ:この台詞は、まさにこの映画が観客に対して問いかけているものだと思います。マリーナの尊厳と粘り強さ、反逆性がその一言に凝縮されていると思います。「君が何者かわからない」と映画の中の人物がマリーナに問いかけますが、じゃあ貴方は自分のことがわかっているんですか、と逆の問いかけになっているのです。

マリーナは自分が女であるとか、トランスジェンダーであるとか、オルランドの元恋人であるとかいう前に、一人の人間だと考えています。それがなによりも基本的なことなのです。他のものは全て後からついてくるもので、元々は一人の人間です。

(C)2017 ASESORIAS Y PRODUCCIONES FABULA LIMITADA; PARTICIPANT PANAMERICA, LCC; KOMPLIZEN FILM GMBH; SETEMBRO CINE, SLU; AND LELIO Y MAZA LIMITADA

人生で最も大切なのは、反逆と抵抗、そして愛

——ダニエラさんが生きていくうえでのポリシーはありますか。

ダニエラ:私が授賞式などでいつも言うことがあります。それは人生にとって一番大切なものは、反逆と抵抗と愛だと。この3つがあれば、人生は良くなるし、社会も良くなっていくと信じています。

 
——反逆と抵抗とは、何に対するものですか。

ダニエラ:人生に対して、政治権力に対して、あるいは差別や偏見など、自分たちが自由に生きることを拒むものに対してです。私たちが今持っている自由は、前の世代の人たちが勝ち取ってきたものです。次の世代のためにも、私たちが社会を変えていかなければいけません。

 
——ダニエラさん自身が、自分らしく生きるうえで心がけていることや支えにしているものはありますか。

ダニエラ:家族とアートが、私にとって自分らしく生きるために不可欠なものです。私は大学にも言っていないし、特別な肩書もないですし、歌も独学で学びました。私が高校を卒業した時、当時は私には全ての扉が閉ざされていました。私は反逆児ですから、扉が閉まっているなら窓から入ってやれという精神でこれまで生きて来ましたけど。(笑)

 
——次回作の撮影も終わられているようですが、どんな役を演じられたのでしょうか。

ダニエラ:次回作では、トランスジェンダーではないストレートの女性弁護士の役を演じています。お酒が強くて、力強い女性です。コメディなので、今回とは全く違うタイプの作品です。

 

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