ブシロードの分析組織「アニメデータインサイトラボ」が、2024年のテレビアニメの話題度ランクのデータを出している。
同ラボでは、テレビアニメ作品の初回放送時の話題と放送終了時の話題を独自に算出した偏差値で比較、放送前の期待と放送中の盛り上がりを可視化することを試みている。
アニメデータインサイトラボ『2024~2025アニメ ゆく年くる年ランキング』公開…アニメデータから読み解く「放送中」施策の重要性 | 株式会社ブシロードのプレスリリース(以下すべての画像データは本プレスリリースより ©Anime Data Insight Lab)
話題の偏差値は、「Googleトレンドの相対的な検索ボリュームをベースに、独自の標準化処理を施して“偏差値”を算出しました。平均値を50とし、60以上で「高い注目度」、70以上で「突出したバズ」と定義しています」とのこと。
これによると、初回放送時の話題トップだったのは、「鬼滅の刃」柱稽古編だ。続いて『推しの子』2期で、人気タイトルの続編や有名マンガ原作のアニメ化作品が上位に並んでいる。
方法初回時に、有名なタイトルが並ぶのは至極当然だが、『しかのこのこのここしたんたん』が6位に食い込んでいるのは、面白い。確かに放送前にショート動画でバズっていた。これは事前プロモーションの成功例といえるのだろう。
しかし、『しかのこのこのここしたんたん』は、放送終了時には30位へと順位を落としている。放送前のインパクトあるショート動画ネタで話題となったものの、本放送でその人気を維持できなかったということだ。同ラボでは、こうした結果を受けて、放送前のみならず、放送中も話題を作る仕掛けが不可欠であるとしている。
放送終了時の話題ランクでは『ダンダダン』がトップに躍り出た。これは筆者の肌感とも合致する。
特筆すべきタイトルは、やはり『マッシュル』だ。放送初回時には、10位以下だったのが一気に2位にまで上り詰めている。これは、OPのCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が世界的にバズったから、ニュースでも取り上げられる機会が増えたためと思われる。これを見ると、OPやEDでバズる事自体が、作品認知に大きく貢献することがよくわかる。おそらく、2023年のYOASOBI「IDOL」でも同じようなことが起きたのでは。
その他、放送終了時に順位を上げているのは、作品の質が高い物が多い。1位の『ダンダダン』は7話「優しい世界へ」に代表される高クオリティなエピソードを数多く提供し、回を重ねるごとに人気を高めていった印象だ。『負けヒロインが多すぎる!』なども順位を上げているようだ。
この順位差を比較すると、やっぱりクオリティそのものも重要だなと思える。配信時代は作品の質が評判になれば、後からいつでも見られる状態にあるため、追いかけてやや後から見始める人も多いだろう。この分析と配信サイトの視聴データを突き合わせて分析してみると、より詳細に人気の変動がわかりそう。
ちなみに、1位と2位の作品は、両方ともCreepy NutsがOPを担当している。あと、『ブルーロック』の安定感も目立つ。これは固定ファンをがっちり掴んでいるということなんだろうか。
同ラボでは2025年1月期より放送開始のテレビアニメの「放送前」の話題の偏差値ランクも公表している。
やはり、人気作品の続編と有名マンガのアニメ化が並んでいる。『Re:ゼロから始める異世界生活』は2024年10月期から連続放送なことが大きいと思われる。やっぱり連続2クールって大事なのかもしれない。『薬屋のひとりごと』の人気は順当だろう。その他、ランク入りしているタイトルも概ね順当かな。『メダリスト』がランク外なのは以外。これはトップクラスに期待されているのかと思っていたのだが。
ここから、放送終了後にどんなランクになるのか、楽しみだ。それこそ、『メダリスト』はフィギュアスケートが題材なだけあってアニメ映えする作品だろうから、映像化のクオリティ次第では順位を上げるんだろう。その他、オリジナルアニメ作品がここに食い込めるのかなども気になる。
ここに挙げたデータ以外にも、続編を除いた新作だけのランクも掲載されているので、そちらも参照すると面白い。
このデータが示すのは、放送前のプロモーションも重要だが、やっぱり放送中の話題を作るのは何よりも作品の面白さであるということだろう。もちろん、同ラボが指摘するように、放送中のPR施策の重要性もあるが、放送中のアピールとして最も効果的なのは、なによりも「面白いかどうか」だろう。そして、その面白さは一発ネタでバズるような小手先では効かなくて、本気で面白いかどうか、なんだろう。