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動画配信事業に投資を義務付けるフランスの政令の概要:国内市場の保護・地方の活性化も?

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JETROが、フランスにおける動画配信事業者に対する法規制の概要を説明していたので、ちょっとご紹介。

フランスの映画・映像産業動向(1)SMAD政令と動画配信事業者 | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

「SMAD政令の概要」と題されたこの記事。SMADとは「オンデマンド型オーディオビジュアルメディアサービス」のフランス語の頭文字をとったもの。この政令で規制対象となるのは、「フランス国内で設立されたオンデマンド型オーディオビジュアルメディアサービスを提供する事業者(SMAD)、もしくは海外で設立され、少なくとも年間10作品以上の映画または映像コンテンツをフランスで配信している事業者」で、YoutubeなどのCGMプラットフォームは対象にしていない。

NetflixとかAmazon Prime、ディズニープラスのようなタイプのサービスが対象ということだ。フランスの国内企業が提供しているサービスに対しての政令だったが、2021年に海外企業も対象に加えている。具体的に何を定めているかと言うと、「2022年からフランスでの売上高の少なくとも20%を欧州に、また、そのうち85%をフランスで製作される映画、ドラマ、ライブイベントなどに投資すること」を義務づけている。

この政令が改正された後、投資額は2021年比で12%増加したという。Netflix、Amazon Prime Video、Disney+の3つのプラットフォームだけで3億4,500万ユーロ(フランスで製作された作品への全投資額のうち約22%)がフランス語の映像コンテンツに投資されたとのこと。

以前、自国内の映画・テレビ事業者からの投資の方が多い状況ではあるが、海外プラットフォームからの投資額は増加傾向にあるようだ。Apple TV(2022年11月29日付通知)とクランチロール(Crunchyroll)(2023年12月22日付通知)に対してもこの投資義務が拡大したらしく、今後ますます増えていくと考えられているとのこと。

クランチロールも対象になっているのは興味深い。クランチロールは良く知られているように、日本アニメを中心に提供しているサービスなので、フランスのアニメーションに投資をすることになるのだろうか。どのような形で投資するのかわからないが、もしかして、日本とフランスの共同製作作品を企画して、そこに投資するという形もあるのかも。同社のブランディングとして、100%フランス製のアニメーション作品に投資するというのは、考えにくい感じもする。とはいえ、日本のアニメは「Anime」というスタイルの表現形式として認知されているので、フランス国内で「Anime」を作る企画への投資というのも考えられる。

JETROの記事では、Netflixの投資例として、オリジナルドラマシリーズの『ルパン』を筆頭に年間20~25本の新作を公開しているという。『フューリー:闇の番人(Furies)』は、公表されていないが1話あたり200万ユーロ以上の予算が組まれたと伝えており、フランス映画産業に大きな貢献をしていることが示唆されている。

また地方都市にNetflixが撮影拠点やオフィスを解説することで、地元産業への貢献もしているとのこと。
 

この法規制は、海外プラットフォームにとっては厳しい規制のようにも思えるし、実際に厳しいと思っているかもしれないが、アメリカへの依存度を減らすという効果も持っているように思う。

Netflixなんかは、すでにアメリカに投下する予算よりも、それ以外の国々に投下する予算の方が大きくなっていると言われている。一国に作品の供給を依存していれば、例えばストライキで制作が止まったら何もできなくなるが、各国で制作体制を整えていればリスクヘッジになる。
Netflix、外国作品への投資額が初めて北米作品を上回る – 海外ドラマNAVI

フランスのSMAD政令は、そういうリスクヘッジの動きを促していると言えるのかもしれない。グローバルプラットフォームのローカルプロダクションは、今後ますます進行していくと思うが、それらの投資を積極的に呼び込む戦略として、こういう政令は有効かもしれない。

日本でも同様の政令を定めるべきかどうか、議論の余地はあるんじゃないだろうか。
 
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