大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』六話「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」は、海賊本騒ぎに蔦重が巻き込まれるエピソードだった。
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鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の抱えとなった蔦屋重三郎(横浜流星)は、どんな本を作ろうかと悩んでいた。鱗形屋は派手なドッカンドッカン当たる本を作れと発破をかけてくるが、そんなものはなかなかない。
しかし、昔の物語を記した青本を今風に面白くして出せば、本を読む人が増えるだろうと思い付き、女郎に面白いネタはないかと聞いて回る。面白い話を作るには取材が必須だ。今の小説家も同じことをやっている。蔦重の働く吉原には、様々な人が訪れるので面白いネタには事欠かない。最近では、物見遊山で「キンキン」=通ぶってる奴やよく来るので、そいつらがおかしくしょうがないのだと女郎たちは言う。
一方、鱗形屋は節用集の海賊本を作って儲けていた。大阪の柏原屋が出した節用集を丸屋源六という版元が勝手に同じものを出版していると訴えがあったが、蔦重はそれは鱗形屋のことではないかと感づく。そして、鱗形屋と西村屋与八(西村まさ彦)が自分を利用しようとしている話を盗み聞きしてしまう。蔦重は海賊本の証拠も掴んだが、告げ口は性に合わないと何もしないことにする。
しかし、悪いことは続かない。長谷川平蔵宣以(中村隼人)が鱗形屋にやってきて、お縄になってしまう。長谷川と蔦重は顔なじみだったので、彼だけは逮捕されなかったことで、鱗形屋は蔦重が密告したと思ってしまう。
蔦重は「一言危ねえと言ってやればこうはならなかった。なぜ言わなかった。心にどっかで臨んでいたからだ、こいつがいなければ取って代われると」と言い、浮かない顔だ。「上手くやるっていうのは堪えるえるものだ」と苦しい表情を浮かべる。
長谷川は世の中そんなものだと言い放つ。そして、蔦重もこの好機を活かすことを決意する。
一方、幕府では田沼がさらに窮地に落ちいる。幕府の財政は良くないが、松平武元(石坂浩二)はプレッシャーをかけるために日光社参を提案。将軍・徳川家治にも根回しをしており、次期将軍の徳川家基(奥 智哉)も日光社参を臨んでいるという。嘆願書を旗本から集めても押し切られ、田沼は追い詰められていく。
海賊版のコンテンツは、現代でも大きな問題だ。江戸時代にも同じような話が会ったのだなと思うと、世の中変わらないものだなと嘆息してしまう。鱗形屋が節用集をパクっていたのは、もちろん金のためだが、火災の影響で苦しい台所事情だったことも描かれる。本作り自体は本当に好きだったことが伺える描写もあり、なんともやるせない。
長谷川平蔵の再登場だが、今回はなかなか粋なことを言う。濡れ手に粟の状態の蔦重に対して粟餅を与える。なんのツテもなく、商売で成り上がろうとすれば、汚いことにも手を突っ込まないと行けない時がある。この好機は蔦重の画策したものではないが、受け入れることは手を汚すことでもある。
ともかく、蔦重が商売人として大きな一歩を踏み出しそうな雰囲気になってきた。次週の展開も楽しみだ。
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