大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第七話「好機到来「籬の花」」は、蔦屋重三郎(横浜流星)が版元として、問屋の仲間に入れもらおうと、新たな細見作りに邁進する姿が描かれた。
※ネタバレあり
これまでのエピソードのレビューはこちら。
鱗形屋の逮捕により、地本問屋の会議所では「鱗はもうおしまいかもしれない」との声が上がる。吉原細見を作る新たな版元を模索する中、西村屋与八(西村まさ彦)が名乗りを上げるが、そこへ蔦重が登場し、自らを版元として迎え入れるよう訴える。しかし、問屋たちは反対の姿勢を示す。そこで蔦重は「今より倍売れる細見を作る」と宣言し、もし実現すれば版元として認めてもらうことを約束させる。
蔦重は吉原の親父たちにこの計画を伝え、彼らの協力を取り付ける。一方、牢に囚われた鱗形屋は激しい拷問を受けていた。彼が御家老の命令で動いていたことを告げても、さらに暴行が加えられる。
蔦重は「俺は鱗の旦那の犯罪を知っていながら黙っていた。だからこそ、償うためにも細見を倍売るしかない」と決意を新たに固める。蔦重は、半値で販売すれば倍の量を流通させることができ、結果的に倍売れると考え、さらにコストを抑えつつ、今より質の高い細見を作るろうと試みる。吉原中からアイデアを募る中、慎之介の「細見を薄くする」という提案を受け、蔦重は「これだ」と閃き、不要な部分を削ることでコスト削減を図る。
一方、西村屋は新たな別の細見を作ろうとして刷り物屋・小泉忠五郎を引き込み、蔦重の細見に対抗しようとする。さらに、吉原の親父たちに脅しをかけてくる西村屋だが、蔦重は親父たちに吉原の細見を倍売る覚悟を示し、このような啖呵を切って見せる。
「あいつら(西村屋)は吉原のことなんか何も考えてねえ。女郎が体痛めつけて稼いだ金を、あんな追い剥ぎみたいなやつらに渡す必要はない。どうせ本を作るなら、女郎たちのためになる本を作らないとだめだ。それが女の股で飯食ってる亡八の、たった一つの心意気じゃねえですか。そのためには、よそに任せちゃいけねえ、自前の本屋を持たなくちゃいけねえ。つまんねえ脅しに負けないで、ともに戦ってくだせえ」と。
蔦重はさらに、細見にこれまで載せていなかった小さな貸し店まで全て掲載することを決定。この決断により、何度も書き直しが必要になるが、より実用的な細見へと進化していく。さらに、花の井が伝説の花魁・瀬川への襲名を決意。彼女の襲名により、細見の注目度が一気に高まる。
一方、小泉忠五郎の細見も完成し、問屋たちはその出来を称賛する。しかし、そこへ蔦重が現れ、「細見は持ち歩くもの」と言いながら懐から自作の細見を取り出す。全ての店を網羅し、女郎屋を対比させる形で配置するなど、工夫が凝らされていた。さらに五代目瀬川の襲名が載っており、問屋たちは驚く。蔦重は「これまでの半値で売れる」と豪語し、庶民でも手に取れる価格設定にすることで市場を広げる。問屋たちの態度は一変し、その場で次々と発注が決まる。
しかし、鶴屋喜右衛門(風間俊介)の表情は浮かない。彼の胸中には何か別の思惑があるのかもしれない。そして、物語の最後、牢屋からついに鱗形屋が出てくる。
倍売るには、仕入れの数を倍にしないといけない。そのためには、半値にする。さらに、持ちやすくすることで、一般市民でも手に取ることができるようにして、大きな店だけではなく、小さな店まで掲載することで実用性を高める。蔦重の商才が発揮された回となった。
そして、蔦重の吉原への情熱が再び発揮されたエピソードだった。「女の股で飯食ってる亡八の、たった一つの心意気」とはなかなかすごい台詞である。これは脚本が見事。
また、花の井の「男前ぶり」も発揮された。吉原のために5代目瀬川を襲名した花の井。伝説の花魁の誕生である。
ちなみに、今回蔦重が作った新細見「籬乃花」は、国書データベースで見れる。
出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100450858

出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100450858
国書データベース
『べらぼう』レビュー一覧
大河ドラマ『べらぼう』第一話!横浜流星演じる蔦屋重三郎の波乱万丈な人生の幕開け、そして吉原の闇 – Film Goes with Net
大河ドラマ『べらぼう』第2話解説!「細見嗚呼御江戸」誕生秘話と平賀源内と蔦重が描いた、江戸の夜の世界 – Film Goes with Net
「べらぼう」3話、江戸時代のクラウドファンド同人誌「一目千本」が吉原を活性化させる – Film Goes with Net
【ネタバレあり】「#大河べらぼう 」4話、天才絵師少年・唐丸は後の東洲斎写楽か?錦絵プロデュースするも手柄を掠め取られる重三郎… – Film Goes with Net
「#大河べらぼう 」5話、田沼意次と平賀源内の100年早い開国計画 – Film Goes with Net
『べらぼう』6話ネタバレ感想:蔦重、海賊本事件に巻き込まれる!鱗形屋の罠と長谷川平蔵の登場 – Film Goes with Net
登場人物
・蔦屋重三郎(横浜流星)
・駿河屋市右衛門(高橋克実)
・ふじ(飯島直子)
・次郎兵衛(中村 蒼)
・半次郎(六平直政)
・留四郎(水沢林太郎)
・唐丸(渡邉斗翔)
・花の井<五代目瀬川>(小芝風花)
・松葉屋半左衛門(正名僕蔵)
・いね(水野美紀)
・うつせみ(小野花梨)
・松の井(久保田紗友)
・とよしま(珠城りょう)
・りつ(安達祐実)
・扇屋宇右衛門(山路和弘)
・大文字屋市兵衛(伊藤淳史)
・志げ(山村紅葉)
・きく(かたせ梨乃)
・朝顔(愛希れいか)
・ちどり(中島瑠菜)
・志津山(東野絢香)
・須原屋市兵衛(里見浩太朗)
・鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)
・鱗形屋長兵衛(三浦獠太)
・藤八(徳井 優)
・鶴屋喜右衛門(風間俊介)
・西村屋与八(西村まさ彦)
・小泉忠五郎(芹澤興人)
・平賀源内(安田 顕)
・小田新之助(井之脇 海)
・平秩東作(木村 了)
・鳥山検校(市原隼人)
・平沢常富<朋誠堂喜三二>(尾美としのり)
・勝川春章(前野朋哉)
・北尾重政(橋本 淳)
・礒田湖龍斎(鉄拳)
・高岳(冨永 愛)
・徳川家治(眞島秀和)
・徳川家基(奥 智哉)
・知保の方(高梨 臨)
・一橋治済(生田斗真)
・田安賢丸(寺田 心)
・宝蓮院(花總まり)
・大崎(映美くらら)
・田沼意次(渡辺 謙)
・田沼意知(宮沢氷魚)
・長谷川平蔵宣以(中村隼人)
・三浦庄司(原田泰造)
・松本秀持(吉沢 悠)
・松平武元(石坂浩二)
・松平康福(相島一之)
・佐野政言(矢本悠馬)