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「べらぼう」9話:玉菊燈籠が照らす吉原の地獄と恋模様!蔦重と瀬川、新之助とうつせみの運命は?


『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』9話「玉菊燈籠恋の地獄」は、タイトルからして吉原の悲しい歴史とそれと反比例するかのような美しい光景に振れることになるのでは、と予想していた。果たして当たるだろうか。

これまでのエピソードのレビューはこちら。

エピソードタイトルになっている「玉菊燈籠」とは、非業の死を遂げた遊女、玉菊を弔う形でお盆に遊郭で燈籠を掲げて祀ったことが由来由来で、彼の地に定着したものだ。毎年お盆になると吉原中で燈籠が掲げられるという。この風習は非常に美しいことから、吉原三景容の一つにも数えられている。

ちなみに「玉菊燈籠」は講談にもなっていて、Audibleで聞ける。

玉菊灯籠

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これが玉菊。

豊国,梅素亭玄魚『古今名婦伝 中万字の玉菊』,魚栄,安政6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1304204 (参照 2025-03-02)

 
蓋を開けてみれば、蔦重と瀬川、そして新之助とうつせみ、それぞれの関係が交錯し、運命を変えようともがく姿が描かれた。吉原の掟、身請けの現実、そして足抜けという禁断の選択肢が絡み合い、息をのむ展開が続いた。足抜けの話がついに出てきた。吉原は絢爛豪華な文化を誇るが、女郎の不自由さ、地獄の側面も当然あるのだ。
 

蔦重は瀬川への想いを自覚する

蔦重は地本問屋との交渉が決裂し、細見の売り場を失う危機に陥る。そのさなか、新之助が訪れ、うつせみについて語り合う。「間夫がいなければ女郎は地獄」──彼らの会話は、遊郭に生きる女たちの過酷な現実を改めて突きつけた。

一方、瀬川は鳥山検校と会っていた。検校は瀬川の上客となっており、彼女の身請けを考えている様子だ。しかし、瀬川の心は揺れていた。検校との仲睦まじい様子を目撃した蔦重は、その関係に苛立ち、ついには瀬川に「その身請け、断ってくれねえか」と訴える。瀬川は「お前があいつのとこに行くのがイヤなんだ、俺がお前を幸せにしたいんだ」と言う蔦重の言葉を受け、最終的に身請けを断る決断を下す。その表向きの理由は「断った方が瀬川の値打ちが上がるから」──しかし、それを親父や女将に本心を見抜かれてしまっていた。

しかし、遊郭の掟は厳しい。瀬川と蔦重の関係が露見し、瀬川には監視がつくことになる。一方、新之助はうつせみの足抜けを試みるが、発覚し、うつせみは過酷な拷問を受ける。彼女の悲痛な叫びは、吉原の冷酷な現実を象徴していた。
 

足抜けした女郎の辿る道

蔦重もまた、瀬川を足抜けさせる計画を立てるが、最終的に瀬川はその道を選ばなかった。彼女は「瀬川」という名跡を守ることを決意し、自らの運命を受け入れる。そして、彼女の身請けが正式に決まり、1400両の代金が支払われることとなる。

新之助は自分が足抜けに誘ったという。それは、自分がなにもうつせみにしてやれない不甲斐なさに耐えられなかったからだという。弱かったのは、うつせみじゃない、自分なんだと後悔の念に襲われる。

その言葉は蔦重の心を打ち砕いだ。自分もまた瀬川の苦境に何もできないことに不甲斐なさを感じていたからだ。それが足抜けの考えた理由の本心だった。結局、瀬川は足抜けを選ばなかったが、その気持は嬉しかったようで、そのことを一生忘れないとほのめかす。二人にだけしかわからないやり取りで。

今の瀬川の先代、四代目瀬川が自害をしたという話が出てくる。女将はそのせいで、本来なら何人も瀬川にその後なって、多くの女が身請けされたはず、その道を四代目が潰したのだという。吉原は不幸なところだが、人生がガラリと変わることが起きるかもしれない、そういう背中を見せるのが瀬川だと女将は言う。瀬川はその言葉に自分の運命を受け入れたのだ。

吉原の表と裏が描かれた良エピソードだった。玉菊燈籠も描かれたが、その時だけは一般女性が見物に訪れることから、足抜けに利用しるという展開が描かれる。過酷な地獄で、それでも行きていく女性の強さをしっかりと見せた、見事な脚本だった。

『べらぼう』レビュー一覧
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登場人物
・蔦屋重三郎(横浜流星)
・駿河屋市右衛門(高橋克実)
・ふじ(飯島直子)
・次郎兵衛(中村 蒼)
・半次郎(六平直政)
・留四郎(水沢林太郎)
・唐丸(渡邉斗翔)
・花の井<五代目瀬川>(小芝風花)
・松葉屋半左衛門(正名僕蔵)
・いね(水野美紀)
・うつせみ(小野花梨)
・松の井(久保田紗友)
・とよしま(珠城りょう)
・りつ(安達祐実)
・扇屋宇右衛門(山路和弘)
・大文字屋市兵衛(伊藤淳史)
・志げ(山村紅葉)
・きく(かたせ梨乃)
・朝顔(愛希れいか)
・ちどり(中島瑠菜)
・志津山(東野絢香)

・須原屋市兵衛(里見浩太朗)
・鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)
・鱗形屋長兵衛(三浦獠太)
・藤八(徳井 優)
・鶴屋喜右衛門(風間俊介)
・西村屋与八(西村まさ彦)
・小泉忠五郎(芹澤興人)
・平賀源内(安田 顕)
・小田新之助(井之脇 海)
・平秩東作(木村 了)
・鳥山検校(市原隼人)
・平沢常富<朋誠堂喜三二>(尾美としのり)
・勝川春章(前野朋哉)
・北尾重政(橋本 淳)
・礒田湖龍斎(鉄拳)

・高岳(冨永 愛)
・徳川家治(眞島秀和)
・徳川家基(奥 智哉)
・知保の方(高梨 臨)
・一橋治済(生田斗真)
・田安賢丸(寺田 心)
・宝蓮院(花總まり)
・大崎(映美くらら)

・田沼意次(渡辺 謙)
・田沼意知(宮沢氷魚)
・長谷川平蔵宣以(中村隼人)
・三浦庄司(原田泰造)
・松本秀持(吉沢 悠)
・松平武元(石坂浩二)
・松平康福(相島一之)
・佐野政言(矢本悠馬)