Amazon MGMスタジオの映画・ストリーミング・劇場部門の責任者であるコートニー・ヴァレンティ氏は、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)において、同社が2026年に劇場公開作品を12〜14本リリースする方針を明らかにしたとdeadlineが報じている。同社は映画館への投資を「財政的にも哲学的にも」強化する方針だという。
同スタジオは、国際的な配給およびマーケティング部門を強化し、2027年には年間16本の劇場公開作品を視野に入れている。この動きは、映画興行業界から歓迎されており、最近の決算報告でも言及された。
Amazon MGMスタジオの責任者であるジェニファー・サルケ氏とヴァレンティ氏は、MPA(映画協会)の会長兼CEOであるチャーリー・リフキン氏によるQ&Aセッションに登壇。サルケ氏は、「劇場公開へのコミットメントは本物であり、非常に重要で、これ以上にワクワクすることはない」と強調した。また、「マーケティング責任者のスー・クロールと私はワーナー・ブラザースで30年以上の経験を積んできた。私たちは個人的にも劇場公開に深く関わってきたため、Amazon MGMが劇場公開に本格的に取り組むことは非常に喜ばしい」と述べた。
同スタジオは、SXSWでプレミア上映された3作品(ポール・フェイグ監督の『Another Simple Favor』、『The Accountant 2』、ニコール・キッドマン主演の『Holland』)について言及。また、MGMのコンテンツ活用についても慎重に進めていることを明かした。ただし、ジェームズ・ボンドシリーズに関しては、Amazonが完全に権利を取得したものの、依然として法的制約があるためか具体的な発言は避けられた。
データドリブンの経営を行うAmazonだが、ヴァレンティ氏は「創造的な直感も重視されている」とし、「Amazon MGMの魅力は、エンターテインメント業界の伝統とAmazonの革新性・大胆さが融合する点にある。データやリサーチを活用する一方で、最終的にはクリエイターの直感や創造的な確信が重要だ」と語った。
また、サルケ氏は「創造的な確信こそが成功を生む」とし、その例として『Saltburn』を挙げた。「この作品の成功はデータやリサーチでは予測できなかった。創造的な直感が最も大事だ。ただし、それが正しい方向に導くことが求められる」と述べた。
さらに、Prime Videoでのライブスポーツ配信の拡大についても触れ、特にスポーツと大作映画がストリーミング視聴数を大きく牽引していると説明した。今後も各国市場での放映権獲得に積極的に取り組む方針を示した。
また、Amazon MGMの制作戦略についても言及し、女性主導の映画やシリーズを増やし、従来の男性中心の作品層を超えた視聴者獲得を目指しているとした。さらに、大規模プロジェクトのコスト削減のため、海外ロケを活用することが増えている現状についても説明。「最大規模の作品では、経済的に最適な撮影地を選ぶ必要がある」と述べつつ、「より多くの作品をロサンゼルスで撮影できるようにしたい」との意向も示した。