『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』10話「『青楼美人』の見る夢は」は、美しかった。美しさで涙が出た。蔦重（横浜流星）が吉原の未来を夢見る姿と、瀬川（小芝風花）の最後の花魁道中を鮮やかに描いた回となった。
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物語は田安賢丸（寺田心）が妹から種をもらう場面から始まる。この「田安の種を蒔く」という発想が、松平武元（石坂浩二）を通じて策略へと発展し、田沼家を追い詰める伏線となる。一方で、吉原では地本問屋の勢力争いが激化。西村屋（西村まさ彦）が吉原の勢力を取り込み、蔦重の「細見」が市中で売れなくなるという影響が出る。
亡八の親父連中から、女郎の錦絵を作るように言われた蔦重は、役者絵はなんで役に入った絵ばかりで素の姿がないのかと不思議に思い、そのアイデアを絵本にしようと思いつく。女郎たちの普段の生活を絵にすることにしたのだ。蔦重は、北尾重政と勝川春章（かつかわしゅんしょう）の2人の絵師に声をかけこの絵を完成させる。
この状況下で蔦重は新たな試みに挑む。錦絵を将軍に献上するという噂を作ることで、吉原の格を上げ、商売につなげようとする。このアイデアに平賀源内（安田顕）も加わり、田沼意次（高橋克実）への献上が実現する。一方で、田安家の策略が進行し、田沼が窮地に追い込まれる展開となる。
蔦重は彼女に「青楼美人合姿鏡」という絵本を手渡し、「あんたは何かくれるものは、いつも本だ」という瀬川の言葉が二人の関係を象徴する。「吉原を楽しい場所にしたい」という蔦重の夢は、瀬川との共有された夢だった。
そして、瀬川の最後の花魁道中が始まる。音を消した演出が、瀬川の美しさと儚さを際立たせ、涙を誘う。このシーンは美しかった。ものを言わぬ映像の力で見事に見せきっていた。道中を見守る蔦重の背中が何かを語っていた、瀬川の凛とした表情が吉原の誇りを象徴していた。
彼女はゆっくりとみんなを見回し「おさらばえ」と静かに去る。蔦重は自分の夢を追い続けることを誓い、吉原を彩る新たな一歩を踏み出す。
一方で、蔦重の新しい絵本は市中で販売されることになるが、鶴屋喜右衛門（風間俊介）の「これは売れない」という言葉が意味深に響く。果たしてその真意とは何か。次回の展開に期待が高まる。
今回のサムネイルは蔦重の作った「青楼美人合姿鏡（せいろうびじんあわせすがたかがみ）」から、当時を代表する二大絵師を起用した豪華絢爛な多色刷り。描かれたのは、吉原の遊女が、和歌や書、華道、琴、三味線などに励む姿。高位の遊女は、豊かな教養と巧みな芸事が求められたのだ。ドラマでも描かれた通り、絵本には、あの松葉屋の遊女・瀬川も描かれていた。
『べらぼう』レビュー一覧
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登場人物
・蔦屋重三郎（横浜流星）
・駿河屋市右衛門（高橋克実）
・ふじ（飯島直子）
・次郎兵衛（中村 蒼）
・半次郎（六平直政）
・留四郎（水沢林太郎）
・唐丸（渡邉斗翔）
・花の井＜五代目瀬川＞（小芝風花）
・松葉屋半左衛門（正名僕蔵）
・いね（水野美紀）
・うつせみ（小野花梨）
・松の井（久保田紗友）
・とよしま（珠城りょう）
・りつ（安達祐実）
・扇屋宇右衛門（山路和弘）
・大文字屋市兵衛（伊藤淳史）
・志げ（山村紅葉）
・きく（かたせ梨乃）
・朝顔（愛希れいか）
・ちどり（中島瑠菜）
・志津山（東野絢香）
・須原屋市兵衛（里見浩太朗）
・鱗形屋孫兵衛（片岡愛之助）
・鱗形屋長兵衛（三浦獠太）
・藤八（徳井 優）
・鶴屋喜右衛門（風間俊介）
・西村屋与八（西村まさ彦）
・小泉忠五郎（芹澤興人）
・平賀源内（安田 顕）
・小田新之助（井之脇 海）
・平秩東作（木村 了）
・鳥山検校（市原隼人）
・平沢常富＜朋誠堂喜三二＞（尾美としのり）
・勝川春章（前野朋哉）
・北尾重政（橋本 淳）
・礒田湖龍斎（鉄拳）
・高岳（冨永 愛）
・徳川家治（眞島秀和）
・徳川家基（奥 智哉）
・知保の方（高梨 臨）
・一橋治済（生田斗真）
・田安賢丸（寺田 心）
・宝蓮院（花總まり）
・大崎（映美くらら）
・田沼意次（渡辺 謙）
・田沼意知（宮沢氷魚）
・長谷川平蔵宣以（中村隼人）
・三浦庄司（原田泰造）
・松本秀持（吉沢 悠）
・松平武元（石坂浩二）
・松平康福（相島一之）
・佐野政言（矢本悠馬）