テレビドラマ『119 エマージェンシーコール』の第9話は、兼下(瀬戸康史)が現場復帰をすべきか悩むことになるエピソードが描かれた。
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冒頭、兼下はスーパーレンジャー(SR)への昇進の話を持ちかけられる。家族と相談する中で、自身の気持ちと向き合うが、過去の事故で同僚を負傷させてしまったことが彼の決断を鈍らせる。指令課でのやりがいと、救助の最前線に立ちたいという思いがせめぎ合い、視聴者にとっても彼の選択は大きな関心事となった。
この兼下が現場を退いたきっかけとなったエピソードは、このドラマの最初のテーマとも言えるものだった。第一話と第二話でそのことが描かれたが、終盤になって再びこのエピソードが繰り返されることになった。ドラマとして、現場か、指令課か、どちらも救助にとって重要であるという点がこのエピソードを描く理由になっていると思われる。
エピソード中盤では、交通事故や食中毒の通報対応が描かれ、それぞれの管制員の的確に処理し続ける。特に兼下の迅速な判断が現場で評価され、彼の能力の高さが示された。一方で、新島紗良(見上愛)は救急救命士の資格取得を決意し、成長への意欲を見せる。
物語は後半に入り、大規模な土砂崩れが発生する。兼下の妻と息子が被災現場にいることが判明し、彼の焦燥感が高まる。しかし、彼は冷静に管制員としての職務を全うし、要救護者の情報収集に徹する。息子からの通報で、妻が足を挟まれて動けないことを知る場面は、緊迫がある。このドラマは、被害現場を極力見せないで、指令課が声だけを頼りに状況を判断する様を描くが、現場の状況を声だけで想像するのは視聴者も同じ。今、いったい現地はどのような状況なのか、想像させることで緊張感を高める演出だ。この音による想像力の喚起がこのエピソードでは特に効いている。兼下の身内がどうなっているのかという焦りを視聴者も共有する。今すぐ現場に駆け付けたいと思う兼下の気持ちは、そのまま指令課に残るか、SRになって現場で救助する道を選ぶのかの葛藤につながっている。こうして視聴者も声だけの状況に置かれて、その焦る気持ちを共有されているのだ。
最終的に、SRが到着し、兼下の家族は無事救出される。妻から「現場に戻りたいなら戻っていい」と告げられた兼下は、今後どの道を選ぶのか。さらに、彼がかつて負傷させてしまった同僚・塩見と偶然再会することで、彼の心境にどのような変化が訪れるのかが気になるところだ。
そして、物語の最後に粕原雪(清野菜名)が無言電話を受ける。これは単なる偶然なのか、それとも新たな事件の兆しなのか。次回への伏線として、緊張感のある終わり方となった。
本話は、兼下の葛藤を中心に据えながらも、他の登場人物の成長や新たな展開を巧みに織り交ぜた回であった。管制員としての使命感と個人的な葛藤が交錯する緊張感のあるストーリーが、視聴者の心を引きつける。次回の展開にも期待が高まる。
そして、今回の声優ゲストは、野沢雅子に神谷浩史、桑島紀子、宝亀克寿と豪華な面々だった。特に野沢雅子は、土砂崩れの通報をしてくるのだが、「悟空、お前なら土砂崩れくらいどうにかできっだろ」みたいな気分にさせられる。