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【ネタバレ注意】「べらぼう」12話レビュー:蔦重のプロデュース力が炸裂!『明月余情』大ヒットの裏側、江戸文化の粋が詰まった内容


NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』12話「俄(にわか)なる『明月余情』」は、江戸文化の粋が詰まった内容だ。江戸の出版文化と祭りの熱気が交錯する物語が展開された。

これまでのエピソードのレビューはこちら。

蔦屋重三郎(横浜流星)は、馬面太夫の自伝本を出版し、それなりの売上を確保するものの、ラインナップ不足に悩んでいた。青本の人気戯作者・朋誠堂喜三二の作品を手掛けたいと考えるが、彼の原稿は鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)に独占されていた。

一方、江戸の祭り「俄(にわか)」の開催を前に、蔦重を含む親父衆は仕掛けを練る。しかし、若木屋与八(本宮泰風)が市中の本屋・西村屋(西村まさ彦)と手を組み、俄祭りの盛り上げに乗らざるを得ないような計略を打ち出してくる。競争と張り合いこそが祭りを盛り上げるという平沢常富(尾美としのり)の言葉に大文字屋市兵衛(伊藤淳史)も焚きつけられ、俄の祭りはまさに競演の場となっていった。

そんな中、蔦重は平賀源内(安田顕)を訪ね、祭の混乱を物語にできないかと提案するが断られる。代わりに源内は朋誠堂喜三二の名を挙げる。実は朋誠堂喜三二とは平沢のペンネームであり、武士としての体裁を保つために匿名で活動していたのだった。蔦重は平沢を説得し、祭の騒動を物語にするよう依頼する。平沢はその提案に乗り、次々と面白い構想を膨らませていった。

一方で、鱗形屋は平沢に対し、青本の出版を自分たちの店からに限定するよう懇願する。平沢は迷いつつも、最終的には鱗形屋の申し出を受け入れるしかなかった。これも付き合いであり、家族一同が路頭に迷うなどと言われては断りづらい。

そして迎えた祭り当日。江戸の町は華やぎ、俄の祭は1カ月にわたって繰り広げられる。大文字屋と若木屋は同じ通りで踊り合い、競い合う。その光景を見た勝川春章(前野朋哉)は絵筆を取り、蔦重は巧みに彼の創作意欲を掻き立てる。また、平沢にも序文を依頼し、祭りの熱狂を記録した一冊『明月余情』が誕生。祭りの躍動感そのままに人気を博し、大評判となった。

30日間にわたる踊りの競演は、最後には若木屋と大文字屋が互いの健闘を讃え、共に踊る結末を迎える。江戸っ子らしい粋な幕引きであった。

しかし、その賑わいの裏側で、世の仕組みは軋み始めていた——。

蔦重は、クリエイターの創作意欲を刺激するのが上手い。平沢を乗せ、勝川春章を乗せ、見事に一冊の本を仕上げてしまう。それだけ、クリエイターから見て魅力的な男なのだろう。蔦重のプロデューサーとしての能力がいかんなく発揮されたエピソードだった。

次回からは、幕府側の動きが慌ただしくなりそう。いよいよ表現規制の波が蔦重を襲うのか。
 
今回のサムネイル画像は、蔦重のプロデュースした『明月余情』から。国会図書館デジタルコレクションで読むことができる。確かに祭の熱気を伝わってくるようだ。

べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 二 (2)

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