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甘党同心と美貌僧侶のバディが幽霊事件を解決する大江戸人情推理帖
新潮社は2025年5月28日、笹木一氏による大江戸人情ミステリー小説『鬼にきんつば 坊主と同心、幽世しらべ』を新潮文庫より刊行した。本作は「日本ファンタジーノベル大賞2025」の最終候補作品で、選考委員の恩田陸氏から「とても面白かった!最後にほろり」と絶賛された注目の一作である。
幽霊譚×謎解き×江戸時代小説の新機軸
『鬼にきんつば』は、鬼のような強面の同心・河原小平次と美貌の僧侶・蒼円がコンビを組み、江戸の町で起こる幽霊絡みの事件を解決していく物語だ。タイトルの「鬼にきんつば」は「鬼に金棒」をもじったもので、作中にはきんつば、落雁、豆大福、粟おこし、幾世餅など江戸時代の甘味が数多く登場する。
主人公の小平次は「鬼の河原」と恐れられる同心だが、実は甘党で幽霊が大の苦手という意外な一面を持つ。一方の蒼円は端正な容姿の僧侶でありながら、幽霊を見る能力を持ち、彼に触れることで他の人にも霊が見えるようになるという特殊な力を備えている。
恩田陸、森見登美彦、ヤマザキマリが大絶賛
「日本ファンタジーノベル大賞2025」の最終選考では、選考委員の恩田陸氏、森見登美彦氏、ヤマザキマリ氏が本作を高く評価した。
恩田陸氏は「のっけからするりとお話に入れ、いきいきとしていて引き込まれ、とても面白かった。甘いもの好きのおっかない顔の同心と、綺麗な顔してシビアな坊主、という組み合わせも楽しい」とコメント。文庫版の解説も担当し、「おいしそう、なのである。何が、というと、この小説に出てくる和菓子が、である」と作品の魅力を語っている。
森見登美彦氏は「とにかく読み心地がよくて、エンターテインメントの書きぶりとしては文句のつけようがない。シリーズ化すれば人気作になりそうだ」と評価。ヤマザキマリ氏も「読み始めから最後までアワードの応募作品だということを忘れて読み耽ってしまった。何より本文に出てくる和菓子が美味しそうで、選考会の翌日には豆大福を調達した」と絶賛している。
「しゃばけ」に続く人気シリーズ化への期待
日本ファンタジーノベル大賞は、シリーズ累計1000万部を超える畠中恵氏の大人気江戸妖怪推理帖「しゃばけ」シリーズを輩出した文学賞としても知られる。「しゃばけ」は2025年にTVアニメ化も予定されており、同じく江戸時代を舞台とした『鬼にきんつば』の今後の展開にも注目が集まっている。
作品あらすじと著者情報
物語は、家賃の値下げを迫る店子の僧侶・蒼円に秘密を見破られた同心・小平次が、人知れず殺された女の霊の謎を解く展開から始まる。異能を持つ美貌の僧侶と心優しい同心が、市井の人々の抱える謎を解決していく大江戸人情推理帖となっている。
著者の笹木一氏は東京都生まれの図書館職員で、本作が日本ファンタジーノベル大賞最終候補となりデビューを果たした。
『鬼にきんつば 坊主と同心、幽世しらべ』は新潮文庫より定価781円(税込)で発売中。ISBN:978-4-10-106041-5。