大石静脚本、阿部サダヲと松たか子が主演を務めるテレビ朝日系の木曜ドラマ『しあわせな結婚』。第2話で妻・ネルラ(松たか子)から15年前の事件について「一緒に死んでくれと言われた」と告白された幸太郎(阿部サダヲ)。第3話では、妻を信じると決めたはずの幸太郎の覚悟が揺らぎ、二人の関係は新たな局面を迎える。深まる謎とともに、夫婦の絆が試される展開となった。
揺らぐ決意と新たな謎「舞鶴」の影
愛する妻は、殺人犯ではない──。
15年前の事件の真相を打ち明けられた幸太郎は、ネルラを信じ、共に生きていくことを固く誓う。しかし、その決意とは裏腹に、阿部サダヲが演じる幸太郎の自信なさげな佇まいは、どこか頼りなさを感じさせ、視聴者にその覚悟のほどを読ませない。一方、松たか子演じるネルラの天真爛漫さの裏に隠された本心も見えず、この絶妙なキャスティングが物語のミステリーを一層深化させている。
「真実を守るのが弁護士の仕事では?」とネルラに問われ、幸太郎の心は揺れる。「ぶれている」と自覚しながらも、夫として妻を守るという決意を示そうとする幸太郎。その人間らしい葛藤を、阿部サダヲがリアルに体現する。
そんな中、幸太郎はテレビ局でネルラの弟・レオ(板垣李光人)に遭遇する。スタイリストとして働くレオは、鋭い観察眼で幸太郎と番組プロデューサー・倉澤ちか(堀内敬子)の関係をほのめかしたかと思えば、「舞鶴のこと、聞きました?」と意味深な問いを投げかける。ネルラが話していないなら自分からは言えない、ともったいぶるレオに、幸太郎は翻弄される。この振り回される主人公像は、まさに阿部サダヲの真骨頂と言えるだろう。
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鈴木家に漂う死の匂いと義父の懇願
「舞鶴」の謎は、ほどなくしてネルラの口から明かされる。それは、6歳の時に海で遭難死した、もう一人の弟の命日に訪れる場所だった。母の死、弟の事故死、そしてネルラの元恋人の不審死。鈴木家には常に「死」の影がつきまとっている。レオを何があっても守り抜くという、家族の暗黙の誓いが、この家の異様さを際立たせる。
幸太郎は、ネルラと彼女の父・寛(段田安則)、兄・考(岡部たかし)、レオと共に舞鶴へ向かう。家族旅行に慣れない幸太郎の所在なさげな様子が痛々しい。温泉に浸かる中、寛は幸太郎にネルラの過去を語り始める。宝塚を夢見た少女時代、絵の才能を開花させた芸大時代、しかし母と弟の死を乗り越え復学した矢先に起きた15年前の事件で、彼女が心を閉ざしてしまったこと。そして、幸太郎と出会い、ネルラが生き返りつつあること。寛は「どうか、ネルラを守り通してやってくれ」と、幸太郎に涙ながらに頭を下げて懇願する。情にもろい幸太郎は、もらい泣きするしかなかった。
蘇る記憶と、夫婦の決定的な亀裂
舞鶴から戻り、二人はウェディングフォトの撮影に臨む。しかし、写真家の無茶な要求と強い照明がフラッシュバックとなり、ネルラは事件当日の記憶の断片を思い出し、その場で倒れてしまう。
⋱ 📺#しあわせな結婚 放送中💍⋰
『ドタバタ!ウエディングフォト📸』
レオ(#板垣李光人)がデザインした
ドレスを着たネルラ(#松たか子)と
幸太郎(#阿部サダヲ)のウエディングフォト撮影🩵なぜか幸太郎は大ジャンプ!?🤣#わせ婚 pic.twitter.com/OkUTLqIwbu
— 「しあわせな結婚」木曜よる9時【テレビ朝日公式】 (@wasekon_tvasahi) July 31, 2025
「あの日、現場には布施以外の誰かがいた気がする」。
意識を取り戻したネルラは、おぼろげな記憶を幸太郎に告げる。チカチカと点滅する光の中で見た、男らしき人物の足。その男こそが真犯人ではないかと幸太郎は考えるが、弁護士として事実を明らかにしようと問い詰める口調が、ネルラを追い詰めてしまう。「尋問しないで」「警察みたい」と、ネルラは幸太郎を拒絶。警察への恐怖心が蘇り、心を閉ざしてしまったのだ。
「弁護士として話しているの?」というネルラの言葉に、幸太郎は苛立ちを隠せない。依頼者に信頼されない弁護士の惨めさを吐露し、ついに家を飛び出してしまう。「行かないで」という妻の言葉を期待しながらも、その声はかからない。
真実の断片が見えたことで、二人の溝はかえって深まってしまった。愛と真実の天秤の上で、幸太郎の苦悩は続く。一人暮らし時代の空っぽの部屋に戻った彼を待つものは何か。予測不能なマリッジサスペンスは、次なる嵐を予感させる。
登場人物
- 原田幸太郎(阿部サダヲ)
- 鈴木ネルラ(松たか子)
- 鈴木レオ(板垣李光人)
- 布勢夕人(玉置玲央)
- 今泉憲資(金田哲)
- 梶原拓(馬場徹)
- 曽我(辻凪子)
- 黒川竜司(杉野遥亮)
- 倉澤ちか(堀内敬子)
- 臼井義男(小松和重)
- 鈴木考(岡部たかし)
- 鈴木寛(段田安則)