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フジテレビ問題、日枝氏辞任を求めるダルトンの声明と放送メディアの独立性

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アメリカの投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が、自社が株を保有するフジメディアHDに対して、取締役相談役を務める日枝久氏の辞任を求める書簡を発表した。

日本語版のPDFも読める。

信頼回復に向けたガバナンス改革実施のお願い

報道で受ける印象よりもだいぶ強い表現で日枝氏の辞任を要求している。

残念ながらこれらの方々の辞任だけではスポンサーは戻ってきてくれません。では、どうしたら、フジテレビはスポンサー、さらには視聴者の信頼を回復することができるのでしょうか。その答えは明白です。
第一に、これが何よりも重要なことですが、日枝久氏が FMH およびフジテレビの取締役を辞任することです。FMH はプライム市場上場会社であるにもかかわらず、そのガバナンスに根本的な欠陥があることは弊社が以前から主張しています。日枝久氏は FMH およびフジテレビの取締役会を絶対的に支配しており、影響力を保持しています。今回のスキャンダルで、FMH およびフジテレビのガバナンスが全く機能していないことが公に明らかとなりました。

とのこと。

かなり直接的に、絶対に辞めろと言っている。

ダルトンは物言う株主として前から有名だが、これは相当に強い表現である。SNSではフジテレビへの処罰感情が高まっているので、これを当然だと見る向きが多いようだ。

実際、フジテレビ経営陣も日枝氏が辞めないとスポンサーは戻らないと考えているだろう。しかし、どうやれば日枝氏を辞めさせることができるのか、それを言い出せる人間が社内にいるのかというと、多分いないのだろう。

なので、大株主のこうした強い批判は、日枝氏を辞めさせる良い口実になるとは思う。

一方で、放送・メディアの独立性という点で、今回の声明は危ういものがある。ジャーナリストの堀潤氏がそのことを指摘している。
「電波は日本の主権にとって大事なもの。特に報道機関が海外の投資家から“こうしなさい”と言われてその報道機関が揺らぐのは本来極めて由々しき事態。政治からの介入も海外からの干渉も、本来なら矜持を持って独立性を担保し続けるのが放送局の使命なのに、その両方が脅かされているフジテレビの責任はある、と個人的には思う」

報道機関は、独立性が重要だ。そのために放送法ではコンプライアンス違反だけで放送免許を政府が剥奪することはできないようになっている。村上総務大臣が、フジテレビの放送免許剥奪の可能性について問われ、それはできないと答えたことで、SNSはまたも紛糾してその発言に対して批判的になっているが、政府が簡単に免許を取り上げられるのも、非常に大きな問題なのだ。

だからこそ、フジテレビは自らをきちんと律する高い倫理感を持って、経営に当たらねばならない。それが内発的にできていない状況だから、こんなことになっているわけなので、その体質の変更を迫るのも重要なのが、複雑なところである。

だが、放送会社の外資規制がなぜあるのかを考えると、ダルトンの言うことを聞いて日枝氏を辞任させましたというストーリーは、良い筋書きとは言えない。本来は国内の株主がこれを言わないと行けなかったと思う。東宝とかね。

 
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