キネマ旬報社は、2024年の映画を対象とした「第98回キネマ旬報ベスト・テン」を発表した。
日本映画のベスト・テン第1位には、三宅唱監督の「夜明けのすべて」が選ばれた。本作は、瀬尾まいこ氏の同名小説の映画化で、パニック障害とPMS(月経前症候群)を抱え、生きづらさを感じる男女が特別な絆を築いていく姿を描いた作品だ。
外国映画のベスト・テン第1位は、クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」が受賞した。原爆開発に携わった物理学者ロバート・オッペンハイマーを描いた本作は、世界的に注目を集め、米国アカデミー作品賞を受賞。
文化映画のベスト・テン第1位には、木寺一孝が演出を手掛けた「正義の行方」が選ばれた。
個人賞
日本映画監督賞 三宅唱(「夜明けのすべて」)
日本映画脚本賞 野木亜紀子(「ラストマイル」)
外国映画監督賞 クリストファー・ノーラン(「オッペンハイマー」)
主演女優賞 河合優実(「ナミビアの砂漠」「あんのこと」)
主演男優賞 松村北斗(「夜明けのすべて」)
助演女優賞 忍足亜希子(「ぼくが生きてる、ふたつの世界」)
助演男優賞 池松壮亮(「ぼくのお日さま」「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」)
新人女優賞 中西希亜良(「ぼくのお日さま」)
新人男優賞 越山敬達(「ぼくのお日さま」)
読者選出日本映画監督賞 三宅唱(「夜明けのすべて」)
読者選出外国映画監督賞 クリストファー・ノーラン(「オッペンハイマー」)
読者賞 斎藤環(『映画のまなざし転移』)
受賞者コメント
主演女優賞 河合優実
「本当にありがとうございます。今回選んでいただいた2本は自分にとってほかの何にも代えがたい映画なので、そのような作品で選んでいただきとても嬉しいです。『キネマ旬報』の表紙を主演女優賞というかたちで飾れることも、とても光栄に思っています。未来への糧としたいと思います。」
主演男優賞 松村北斗
「今回、『キネマ旬報』の主演男優賞という素敵な賞をいただき、この賞の歴史と、いままで受賞された方々のお名前を見ながら、とても光栄に思っております。映画を通して、自分がかつて覚えた感動を誰かに受け渡せているんだなと、何かもう一つの“居場所”を見つけられたような気持ちになりました。」
「第98回キネマ旬報ベスト・テン」の表彰式は、2月20日(木)18時より渋谷Bunkamuraオーチャードホールにて開催される。また、その模様はキネマ旬報社の公式YouTubeチャンネルにてライブ配信される予定だ。
ライブ配信の詳細は、キネマ旬報社の公式チャンネルにて確認できる。
【キネマ旬報ベスト・テンとは】
『キネマ旬報』は、1919年(大正8年)に創刊し、現在まで続いている映画雑誌。初めてキネマ旬報ベスト・テンの選出を行ったのは、1924年度(大正13年)。当初は、編集同人のみによる投票で、〈芸術的に最も優れた映画〉〈娯楽的に最も優れた映画〉の2部門(外国映画部門のみ)だったが、1926年度(大正15年)、日本映画の水準が上がったのを機に、現在と同様の〈日本映画〉〈外国映画〉の2部門に分けたベスト・テンに変更。戦争による中断があったものの、大正年間から継続的にベスト・テンは選出され続け、2024年度のベスト・テンで98回を数える。
キネマ旬報ベスト・テンの特徴
■世界的にみても、非常に長い歴史を持つ映画賞であること。
(今回で98回を数える。ちなみに、アメリカのアカデミー賞は2025年で第97回となる)
■ベスト・テンという形で、その年を代表する「日本映画」「外国映画」「文化映画」を10本、さらに「日本映画」と「外国映画」には読者選出部門を設け、それぞれの10本を挙げるほか、「日本映画監督賞」「外国映画監督賞」「日本映画脚本賞」「日本映画主演女優賞」「日本映画主演男優賞」「日本映画助演女優賞」「日本映画助演男優賞」「日本映画新人女優賞」「日本映画新人男優賞」「読者選出日本映画監督賞」「読者選出外国映画監督賞」「キネマ旬報読者賞」と、その年の称賛すべき作品・映画人を多面的に選び出していること。
■ベスト・テン及び各賞の選考者は、映画を多く見ている者に厳しく限定され、しかも選考者数が多く(2024年度はのべ136名)、その年齢・所属の幅(映画評論家、ジャーナリストなど)も広いことから、当年の映画界の実勢を反映する、最も中立的で信頼に足る映画賞という評価を受けている。
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