『119エマージェンシー・コール』第8話「指令システム・ダウン!最後の肉声指令」は、堂島のベテランらしい活躍が描かれた。昔取った杵柄のカッコいい場面というか、例えるなら、『トップガン マーヴェリック』でトム・クルーズが古いF14で最新戦闘機とのバトルに挑むような、そんな興奮があった。
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前回から続く粕原家の火事の真相が明らかになる。幼少期の粕原雪(清野菜名)のわがままが間接的に火事の原因となり、姉・小夏(蓮佛美沙子)がそれを長年秘密にしていたという事実。しかし、家族はそんな小夏を優しく受け入れ、雪は小夏が自分に119番を教えてくれたことを思い出す温かいシーンが印象的だった。失声症だった小夏が声を取り戻し、家族の絆が深まる様子が丁寧に描かれている。
しかし、今回のメインテーマは、粕原家の葛藤ではない。太陽フレアの影響でGPSに影響が出るかもしれないというニュースがあったらしい。GPSは、119の司令管制でも通報者の位置を特定するために重要な働きをしている。これがダウンすると大変だ。
そんな中、粕原は副台に初挑戦、堂島(佐藤浩市)の指導のもと失敗しながらも無難にこなせることを見せる。一方で堂島は咽頭がんを患っており、引退をすることを決める。。咽頭がんを患う堂島は声帯を失う可能性があり、「声が出なくなれば管制員としての仕事はできない」という現実に直面している。「最悪の事態を想定して先手を打つのが管制員らしい」という堂島の言葉には、彼の職業に対する誇りと覚悟が感じられる。
しかし、そんな堂島に対して粕原は、小さい時に通報して助けてもらった話をする。あの時堂島が言った「大丈夫、絶対に助ける」と言う言葉に救われたのだと。その言葉が今の粕原につながっているのだ。
システムダウンという危機
ドラマ性を高めるのは、太陽フレアの影響で指令システムがダウンするという危機的状況。最新技術に頼れなくなった時、堂島の長年の経験と判断力が光を放つ。紙の地図とホワイトボードを駆使し、的確に指示を出す堂島の姿は、テクノロジーだけでは代替できない人間の経験と判断力の重要性を象徴している。
声を失いそうなベテランが、声だけしか頼れない状況の中、その経験をフルに活かして困難な状況を乗り越える。テクノロジーの発達した現代において、なお重要な「人間の声」の力を描いたエピソードと言える。システムがダウンした時に頼れるのは人間の判断力と経験、そして言葉の力。堂島の「絶対に大丈夫」という言葉が雪を救い、今度は粕原の「絶対に大丈夫」という言葉が堂島の希望となる。子どもの頃の雪から堂島への手紙が見つかり、堂島が治療に向かう決意をする最後のシーンは胸を打つ。
今回の声優ゲストは日笠陽子。太陽フレアの影響でGPSが使用不能になり、ドローンが高速道路に落下、それで玉突き事故が発生したことを知らせる通報者の役だった。日笠さんの芝居は聞いていて安定感がある。とてもリアルな芝居だったと思う。
登場人物
粕原雪(清野菜名)
高千穂(中村ゆり)
兼下睦夫(瀬戸康史)
新島紗良(見上 愛)
与呉心之介(一ノ瀬颯)
箕輪健介(前原滉)
上杉 昴(酒井大成)
田中 悠(三浦獠太)
粕原小夏(蓮佛 美沙子)
粕原春香(堀内敬子)
粕原 銀(遠山俊也)
高千穂一葉(中村ゆり)
堂島信一(佐藤浩市)