アニメーション界を牽引してきた湯浅政明監督が、新たに設立したアニメーションスタジオ「ame pippin(アメピピン)」の初プロジェクトとして、長編アニメ映画『Daisy’s Life』を制作するとVarietyが報じている。公開は2026年を予定だという。
本作は、吉本ばななの小説『ひな菊の人生』を原作とし、世界的な現代美術家・奈良美智がキャラクター原案を担当。日本とフランスの共同製作であり、製作にはアスミック・エース、アニプレックス、コミックス・ウェーブ・フィルムズの3社が参加。フランス側はカンヌやアヌシーで受賞歴を持つMIYUプロダクションズが共同製作を務める。
『Daisy’s Life』は、母を事故で失った6歳の少女・デイジーが、叔母のもとで暮らすなかで出会う不思議な少女・ダリアとの交流を描く物語。舞台は下町の焼きそば屋というごく限られた世界だが、ふたりの出会いによって、時間と空間を超えるような壮大なスケールの物語が展開するという。
湯浅監督は「ばななさんの作品の中でも特にイメージが湧く小説。怖い描写もありながら、最後の数行は夢のように幸福で、過去に自分が見た夢のようでもあった。焼きそば屋のある半径100メートルの世界を、宇宙的な視点で描いてみたい」とコメントしている。
脚本は、『散歩する侵略者』『寝ても覚めても』などで知られる脚本家・田中幸子が担当。アニメーション分野では初の挑戦となる。
奈良美智が手掛ける子どもたちのビジュアルは、幻想的な物語に独特のリアリズムを加える存在として注目される。
プロデューサーには『鉄コン筋クリート』や『妄想代理人』などを手がけたアスミック・エースが名を連ね、MIYUプロダクションズのエマニュエル=アラン・レナール氏とピエール・ボサロン氏は「湯浅監督という、時代を代表するアニメーション作家と再び手を組めることを光栄に思う」と声明を発表した。
湯浅監督は、2004年の『マインド・ゲーム』で衝撃的な長編映画デビューを果たし、その後も『夜明け告げるルーのうた』『犬王』(ゴールデングローブ賞ノミネート)など独創的な作品を発表。2013年に共同設立した前スタジオ「サイエンスSARU」では、『DEVILMAN crybaby』『映像研には手を出すな!』などを生み出し、国内外で高い評価を受けてきた。
新スタジオ「ame pippin」は2025年2月に設立され、湯浅監督は「アニメーション表現の限界に挑みたい」と語っている。