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金曜ドラマ『イグナイト』徹底レビュー!正義と闇が交錯する新感覚リーガル活劇を解説


2025年4月よりTBS金曜ドラマ枠で放送が開始された『イグナイト –法の無法者–』は、間宮祥太朗演じる新米弁護士・宇崎凌が、正義と現実のはざまで揺れながらも”戦う弁護士”としての一歩を踏み出すリーガル・エンターテインメントである。第1話は、炎と衝突のイメージに彩られたスピーディーな導入と、意外性に満ちた構造で観る者を引き込んだ。意外性あるTBSの弁護士ドラマと言えば、昨年の長谷川博己主演『アンチヒーロー』があったが、あれとも異なる異色さだ。

バスの派手な横転から幕を開ける異色のテレビドラマ

冒頭、暴走するバスと炎上というドラマにしては異例のアクションシーンから幕を開ける。これは主人公・宇崎の悪夢として描かれるが、今後何かの伏線になるのか。おそらく、彼の父親のエピソードではないかと思われる。このバスの運転手が宇崎の父親かもしれない。このエピソードは後々、詳しく描かれることもありそうだ。

宇崎は司法試験に合格しながらも事務所が見つからず、弁当屋を営む母の手伝いと深夜のバイトに明け暮れる日々。そんな彼に手を差し伸べたのが、仲村トオル演じる謎多き弁護士・轟謙二郎が率いるピース法律事務所だ。採用面接で「力だけでは守れないものがある」と語る宇崎の信念が、ただの青臭さではないことが徐々に明かされていく。

事務所のモットーは「争いを起こしてこそ利益が生まれる」という過激なもの。司法改革以後、訴訟案件の奪い合いとなった現代社会において、弁護士のビジネス化をリアルに描き出す。そこに宇崎のような「まっすぐな正義」がどう作用するのかが、本作の核心である。

殺人を工事現場の事故に見せかけた連中の悪事を「無法」で暴く弁護士たち

第1話で取り扱う案件は、労働現場での死亡事故の真相究明。表向きは被害者の過失による事故とされていたが、轟は企業の隠蔽体質に目をつける。遺族・斎藤美咲(土屋太鳳)へのアプローチ、地元住民への聞き込み、企業側顧問弁護士との対峙など、テンポよく進む調査の過程には『リーガル・ハイ』的な軽妙さと、『グッドワイフ』に通じる社会派要素が同居する。

裁判パートでは、宇崎、轟、伊野尾(上白石萌歌)、高井戸(三山凌輝)の4人が黒スーツで法廷へと向かうシーンが象徴的だ。斎藤を揺さぶる証人尋問、事故後に廃車された車の追跡、そして残された血痕といった物的証拠の提示により、企業とその後継者の過失だけでなく、殺意の有無にまで踏み込んでいく。

最も印象的なのは、宇崎が斎藤の「言いたくても言えなかった想い」を代弁するようにして法廷で語るくだりだ。彼の父もかつて事故で亡くなり、冤罪のように扱われた過去があることが明かされる。その個人的な痛みが、法の枠を超えた“闘志”として昇華される瞬間に、視聴者は心を揺さぶられる。

物語のラストで、実は轟と企業側の弁護士・桐石(及川光博)が情報を共有していたというどんでん返しが用意されている。この”裏の協力関係”が、ドラマ全体に”法の正義”とは何かを問いかける伏線として機能している点が興味深い。ルールを破ってでも人を救うのか、あるいは正義の名を借りた権謀術数なのか。

違法も辞さない過激派弁護士に、まっすぐすぎる主人公

『イグナイト』は、真っ直ぐすぎる主人公と、ルール無視も辞さない事務所との相性が一見ミスマッチでありながら、それがかえって現代の“炎上社会”における「新しい法の物語」の可能性を感じさせる。暴走と火種に満ちた第1話は、今後の展開に向けて確かな火を灯したと言える。

第一話全体の演出としては、日本のテレビドラマとしては珍しい描写が目立った。冒頭のバスの横転事故という派手なシーンに加えて、宇崎が走る自動車の屋根にしがみつくアクションを披露するなど、近年の日本のテレビドラマとしては挑戦的だ。ルックもシネマティックで従来のテレビドラマとは違うものを作ろうという意欲に満ちている。本作は、藤井道人監督作品でお馴染みの制作会社「BABEL LABEL」初のテレビドラマ作品。第一話の演出は『帰ってきた あぶない刑事』を手がけた原廣利。カーアクションなどの派手なエンタメ要素は『あぶない刑事』を彷彿とさせるものがあった。