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『イグナイト -法の無法者-』第3話ネタバレ考察:潜入捜査で見えた技能実習制度の闇と、轟が宇崎を引き止める本当の理由


TBS金曜ドラマ『イグナイト -法の無法者-』は、日本のドラマとしてはルックが良い作品だ。3話は夜のシーンも多いこともあって、カメラの工夫があったし、アクションシーンを長回しで見せるという工夫もあって、演出的に見応えある内容になったが、物語の核心も徐々に顔を覗かせる重要な回となった。

大怪我をした技能実習生が隠す真実とは

第3話では、宇崎凌(間宮祥太朗)と外国人技能実習生クオン(パース・ナクン)との出会いが軸となる。宇崎は轟を頼って訪ねてきた高山恭子(アン ミカ)の話に耳を傾け、入院中の技能実習生・クオンに関心を抱く。彼は明らかに労災であるはずの怪我について「仕事中ではなかった」と主張し続ける。背景には、技能実習制度という構造的な弱者性と、監理団体による事実上の支配構造が見え隠れする。

宇崎は、事務所の方針に逆らって依頼を引き受ける決意を固める。お目付け役として同行するのは冷静な観察眼を持つ伊野尾麻里(上白石萌歌)だ。伊野尾は、法を知ることで声を出せるようになるのだと語り、実習生制度の現実に静かに向き合っていく。クオンが勤める水産工場の二見社長に話を聞くが、何か実習生たちが愛想が良くないのが気になる伊野尾。二人の捜査から、技能実習生たちが置かれる過酷な現状と、黙して語らぬその内側にある恐怖が浮かび上がっていく。

船での潜入と“ワンカット”の衝撃──暴かれる違法労働の実態

物語は後半、一気にスリリングな展開を見せる。宇崎と伊野尾は、実習生のチャンからの手がかりを元に、夜の港に停泊する謎の船へと潜入する。船は海を越え、たどり着いたのは妙な産廃処理現場。潜入するも見つかってしまう宇崎と伊野尾だが、ここで展開される長回しの“ワンカット”によるアクションシーンは、日本の連続ドラマとしては異例の迫力を持っていた。BABEL LABELが手掛けるドラマのひと味違う部分はこういう部分だろう。意欲的なカットを見せてくれた。

ついに宇崎たちは、クオンが負った傷の真実を突き止める。産廃処理工場での違法労働中に重傷を負わされた事実が、クオン本人やチャンたちの証言、さらには映像証拠によって明らかとなる。

法廷での逆転と、明かされる轟の過去

裁判の場面では、伊野尾と宇崎の連携によってクオンの証言と証拠映像が有効に活かされる。宇崎が提示したのは、クオンの兄貴分である実習生から預かったドライブレコーダーの映像だ。これにより、二見社長の偽証は打ち砕かれ、制度的弱者に光が差す結果となった。宇崎は論告で「育成就労制度に変わろうとしている技能実習制度の中で、二度と同じような犠牲者が出ないように」と訴える。

しかし、訴訟の背後では、桐石(及川光博)が元実習生たちを焚き付けて集団訴訟を仕掛け、賠償額を引き上げようと動いていたことも判明する。これがこの事務所のやり方なのだと宇崎は改めて実感することになった。

終盤、宇崎は轟(仲村トオル)から衝撃の告白を受ける。轟の娘は、かつてバスの事故で命を落としていたという。そして、そのバスの運転手こそが宇崎の父親だった。轟は被害者遺族、宇崎は加害者遺族――ふたりの関係には、法と復讐を越えた複雑な情念が絡みつく。

このエピソードの冒頭、轟は宇崎に対して「お前は俺の手の平の中だ。お前の実家の借金500万円を肩代わりしたから辞めさせない」と言っていた。そうまでして宇崎を引き止めたかったのは、彼の父親が加害者だからなのか。轟の狙いはなんなのだろうか。ここに本作のストーリーの核心があるのだろう。

5年前のバス事件は、第一話の冒頭で描かれている。一話ごとに事件を解決してゆくだけでなく、大きな物語がようやく動き出した。

登場人物
宇崎凌(間宮祥太朗)
伊野尾麻里(上白石萌歌)
高井戸斗真(三山凌輝)
浅見涼子(りょう)
桐石拓磨(及川光博)
轟謙二郎(仲村トオル)