春の気配とともに訪れた第7話は、「居場所」と「生き方」についての静かな問いかけに満ちていた。舞台はいつもの団地。冒頭、主人公・麦巻さとこ(桜井ユキ)はスマホの通知を待ちわびる様子で始まる。やがて現れたのは目白弓(中山ひなの)。希望の進学先に合格したという報せだった。弓の旅立ちは、同じ団地で育まれた関係性が変わっていくことを象徴していた。
さとこは羽白司(宮沢氷魚)や美山鈴(加賀まりこ)とともに公園で昼食をとる。穏やかな時間が流れるなか、団地には変化の波が押し寄せている。八つ頭仁志(西山潤)と反橋りく(北乃きい)は移住を決断し、弓も団地を離れる。そんななか、美山から「今使っている部屋をあげる」と告げられたさとこは、心揺れる。
団地に住み続けるということは、古びた建物と向き合うことでもある。修繕だけでは補いきれない不便さを引き受ける覚悟が必要だ。司は「お金がなくてもここでは生きていける」と語るが、それはこの共同体があってこそ成立する言葉でもある。
自分の未来を見つめなおすさとこに寄り添うのは、青葉乙女(田畑智子)だ。さとこを豆腐料理専門店に誘い出し、少しずつ彼女の迷いをほぐしていく。さとこがフォローしている料理アカウント「うずらさん」(宮崎美子)の存在が、静かな希望として浮かび上がる。スーパーの半額品を使った見事な料理。一人暮らしを満喫する投稿者に、さとこは心を惹かれていく。
青葉の企画である「50代ひとり暮らし特集」で、うずらさんに取材を依頼することになる。かつて誹謗中傷で心を閉ざしたうずらさんだが、とりあえず会ってみることを決意。三人が会した中国茶の店で、さとことうずらさんは過去の鬱経験や静かな暮らしへの思いを語り合う。SNS投稿が日常に与える小さな彩りと、自分のために過ごす時間の尊さ。派手さのないこの対話は、じんわりと視聴者の心に染み入る。しかし、やっぱり取材は受けられないとうずらさんは言う。しかし、3人はこの出会いを心から喜んでいた。
そして、物語は大きく動く。春、団地の桜が咲き、弓は旅立っていく。さとこは美山の家を訪ね、とうとう「部屋をいただきたい」と伝える。心の決断を言葉にしたその瞬間、美山の娘が登場し、「そんな話は聞いていない」と思わぬ展開に。静かな決意の先に現れた新たな壁。第8話へと続く波乱を予感させながら、第7話は幕を閉じる。
今週のエピソードもまた、派手な出来事はない。しかし、だからこそ深く心に響く。人と人の距離感、暮らしの重み、自分らしく生きることへの戸惑いと肯定。静けさのなかに、確かな温もりが描かれていた。
「しあわせは食べて寝て待て」は、現代を生きるすべての人にとっての小さな処方箋のようなドラマである。どこかにありそうで、確かに存在する「丁寧な暮らし」がここにある。
登場人物
麦巻さとこ(桜井ユキ)
羽白司(宮沢氷魚)
美山鈴(加賀まりこ)
唐圭一郎(福士誠治)
青葉乙女(田畑智子)
マシコヒロキ(中山雄斗)
巴沢(ともえざわ) 千春(奥山 葵)
反橋りく(北乃きい)
八つ頭仁志(西山潤)
高麗なつき(土居志央梨)
目白弓(中山ひなの)
麦巻惠子(朝加真由美)