TBS日曜劇場『御上先生』第5話「-confidence-」は、金融とはなにかを問うエピソードとなった。
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ビジコンに挑む御上のクラス
御上のクラスでは、AO入試対策として、高校生ビジネスコンテスト(ビジコン)に出ようという話で盛り上がっている。御上(松坂桃李)は、そのネタではそのビジコンには勝てない、文科省とある財閥との関わりがあって、勝つ高校に偏りがあると指摘。ではどうするのか、さらに考えさせるように誘導していく。
一方、神崎(奥平大兼)は、真山結弦(堀田真由)との面会できず、手紙を送っていた。その返事が来た。内容は、御上と一緒なら面会に応じるというもの。
御上は、理事長(北村一輝)にビジコンで思う存分やってほしい、あのビジコンで勝つのは学園の悲願なんだと告げる。しかし、文化祭のときのような刺激の強いものではない形でやってほしいと釘を刺す。
教室では、ビジコンのアイディアをねっている。72の法則というものがここで紹介される。元本が倍になるに期間は72を金利で割ると計算できるというものだ。この計算だと定期預金では144年かかるという。これからの若い世代は自らの人生設計のために金融をやらねばならない。社会に貢献できる金融商品のアイディアを生徒は考え始める。
映画『ホテル・ムンバイ』と弓弦
一方、神崎は御上とともに、弓弦に面会に行く。神崎は弓弦に「なぜ僕を殺さなかったのか、あなたの家族を壊したのが僕なのに」と問うが、弓弦は神崎の不倫暴露記事は知らなかったという。
では、弓弦の起こした刺殺事件の動機はなにか。父への当てつけなのではないかと神崎は考える。なぜなら、自分が父への当てつけで冴島先生(常盤貴子)の不倫を暴いたから。
神崎は刺殺事件の被害者遺族の手紙を読み始める。その内容は、以下の通りだ。
「今、一番憎い人は真山結弦と答える。息子のいない部屋であなたの極刑だけを願う、消えてくれればいいと思っていた。しかし、神崎くんに言いたいことはないかと聞かれて、伝えたい事があることに気づいた。あなたの境遇を知った時、どうしてあんなことをしたのかわかった気がする。自分とゆうすけが逃げ出した場所と似ていた、弓弦のいた場所は。あなたが殺した人の背中には、父親が押し付けたタバコの痕がある。そのことをどうしても伝えたかった。なぜあなたがそんな風になってしまったのか考えざるを得ない。これからもずっと」
御上は、ここである映画のことに言及する。高級レストランを少年テロリストたちが占拠して、次々と罪のない人の命を奪っていく。その少年は高級レストランのピザを美味しそうに食べる。彼はこれまでピザを食べたことがないほどに貧しい地域の生まれなのだ。そのホテルにいるのは、ピザを食べたことのない貧しい少年と、たまたま観光に来ていた客しかいない、本当に悪いやつはそこにはいない、と御上は言う。
この映画は、『ホテル・ムンバイ』のことだろう。2008年に世界を震撼させた「ムンバイ同時多発テロ」を題材にした作品で、テロリストに立ち向かったホテル従業員と宿泊客を描いた作品なのだが、その一方でテロリストをただの悪人と描いていない作品だった。
ピザを食べるシーンもとても印象的だが、他にも豪華な高級ホテルを占拠して「こんなところは初めてだ。まるで楽園だ」と目を輝かせる少年テロリストもいる。
この映画の監督にインタビューしたことがある。詳しくは以下のリンクを読んでほしい。
「愛してる」と家族に電話するテロリスト…。加害者側の世界にも目を向ける『ホテル・ムンバイ』 | ハフポスト アートとカルチャー
監督はこう言っていた。
「人は誰しも奪われたら戦うしかなくなるのです。家族を持ち、夢を見ることが許され、安心して暮らせる環境を増やすことがテロの撲滅に最も有効なことだと私は信じています」
弓弦の境遇にも同じことが言えると御上は言いたかったのだろう。
お金とは信じるものを形にしたもの
ビジコン参加組は、アイディアに行き詰まりだす。是枝先生(吉岡里帆)は、そこで自分の体験を語る。実家が裕福な是枝はお金は汚いものだと思っていたが、そうではない。お金は私達が価値を信じるから価値が生まれるもの、つまり真実ことの具現化なんだと気がついたという。
それに触発されて、冬木(山下幸輝)は、自分の父が元金融マンで、リーマンショックで務めていた銀行が無くなったのだと語り始める。「家を持ちたいという低所得層の夢を利用して、お金儲けするなんて最低」だと女生徒は言う。冬木の父も同じこと言ったそうだ。本当の良い金融商品は人を助けるためのもののはず、そういう金融商品を作ってほしいと冬木の父は言ったそうで、生徒たちはその話に感動し、一丸となっていった。AO入試対策でビジコン参加しようとしたことを反省する者もいた。
そして、ビジコンは最終審査まで勝ち残り、発表当日。中岡(林泰文)が審査員長を務め、槙野(岡田将生)が会場で見守る中、生徒たちは、「高校生が夢見る未来の起業応援ファンド」を発表。
冬木は、「金融の本来の意味は、信用と助け合い。お金は信じるものが形になったもの」とプレゼン。中岡はその言葉を聞いて彼らの優勝を決めた。
最後に、神崎は御上に、御上の兄の件が雑誌に掲載されると父に聞いたと告げる。御上は「もう終わったことだ」と言うが本心には見えない表情だ。来週はいよいよ、御上の兄の事件の真相が語られることになりそうだ。