[PR]

「60ミニッツ」ベテラン記者レスリー・スタール氏、トランプ氏の訴訟和解を予想し「嘆き悲しむ」と表明


パラマウント、200億ドル名誉毀損訴訟の解決迫られる中で報道の自由への懸念高まる

CBSの看板報道番組「60ミニッツ」の長年のキャスターを務めるレスリー・スタール氏が、ドナルド・トランプ前大統領による200億ドルの「根拠のない」名誉毀損訴訟について、和解が成立することを予想していると述べた。しかし同氏は、この解決により生じる影響に対して深い憂慮を示している。

スタール氏は「ザ・ニューヨーカー・ラジオ・アワー」のポッドキャストインタビューで、「既に嘆き悲しむことを考え始めている」と語った。同氏は「和解が成立することを知っている」と述べ、CBS親会社パラマウント・グローバルの支配株主であるシャリ・レッドストーン氏がスカイダンス社との合併承認のため政府の許可を必要としていることから、「金銭の授受が行われることを承知している」と付け加えた。

トランプ氏の訴訟、法的根拠に疑問の声

トランプ氏は昨年11月にカマラ・ハリス副大統領を破り再選を果たした後も、選挙前の「60ミニッツ」エピソードを理由に訴訟を起こした。同氏は、CBSニュースがハリス氏とのインタビューの異なる編集版を複数のCBS系列局に提供したことで不当な扱いを受けたと主張している。しかし、これはテレビ報道における標準的な慣行である。

法律専門家は軒並み、この訴えに法的根拠がないことで一致している。それにもかかわらず、最近では複数の報道機関の親会社がトランプ氏からの圧力を受けて和解金を支払ったり、屈服したりする事例が相次いでいる。

「60ミニッツ」内部の混乱続く

スタール氏のコメントは、高視聴率を誇るCBSの報道番組を巡る不透明感が高まる中で発表された。長年エグゼクティブプロデューサーを務めていたビル・オーウェンズ氏が4月に退任。同氏はトランプ氏の報道を巡ってレッドストーン氏をはじめとする企業幹部からの圧力を理由に挙げていた。また、CBSニュース部門責任者のウェンディ・マクマホン氏も最近退任している。

スタール氏はオーウェンズ氏の退任について「腹への一撃だった。息ができなくなりそうな種類のパンチだった」と表現した。オーウェンズ氏は退任前、スタッフに対して辞職せず、トランプ氏による報道への圧力にもかかわらず厳しい報道姿勢を維持するよう求めていた。この呼びかけは、番組スタッフが「集団退職」について公然と議論していた時期に行われたという。

スカイダンス統合後の報道の自由に懸念

スカイダンス社の統制下で「60ミニッツ」が「根本的に」変化することを予想するかとの質問に対し、スタール氏は「スカイダンスのデイビッド・エリソンCEOと経営陣が報道の自由を道標として掲げ、我々が独立性を保ち職務を遂行することの重要性を理解してくれることを期待している」と述べた。同氏は「それを期待し、願い、求め、祈っている」と続けた。

「60ミニッツ」でそうした結果になることへの「楽観的な見方が多いか」との質問には、「いいえ。しかし悲観的な考えも多くない」と答えた。

トランプ氏の戦略的メディア攻撃に警鐘

インタビュー全体を通じて、スタール氏はトランプ氏の戦術によって増幅されているメディアへの国民の信頼の着実な低下を嘆いた。かつて同氏に記者との激しく対立的な姿勢について質問した際、トランプ氏は否定的な報道が出た時に「誰もあなたを信じなくなる」ようにするためにそのように行動していると説明したという。

この説明に対してスタール氏は「身震いした。『うわ、彼はこれを熟考している』と思ったから」と述べた。「これは『昨日メディアが私について何か言った』という偶然の、怒りに任せたものではない。それは計算されたもの、戦略だった」と語った。

50年超のキャリアで感じる報道への「心の痛み」

1972年にウォーターゲート事件の取材でCBSニュースに入社し、1991年から「60ミニッツ」に携わってきたスタール氏は、50年以上の職業生活を経た今、自身の専門分野の状況について「心の痛み」を感じると表現した。

一般市民は「我々の民主主義における自由で強靭で厳しいメディアの重要性を理解していない」と同氏は指摘。「我々には果たすべき機能がある」ことを市民が把握していないと述べ、「国民は我々の行っていることが公的生活の一部になることを望んでいないようだ」と憂慮を示した。

ソース:’60 Minutes’ Lesley Stahl Dreads Paramount Settlement Of Trump Lawsuit