『クジャクのダンス、誰が見た?』の第一話、物語のつかみとして非情に興味をそそられる。
山下心麦(広瀬すず)は21歳のクリスマス・イブの日に、屋台のラーメンを父親の山下春生(リリー・フランキー)と食べている。その日、春生は放火で殺されてしまう。犯人として、かつて春生が逮捕した遠藤力郎(酒向芳)の息子、遠藤友哉(成田凌)が容疑者として逮捕される。
後日、心麦はラーメン屋の屋台の親父から春生の封筒を受け取る。その中には300万円と「自分が殺されて、遠藤友哉が逮捕されたら、冤罪だ」と書かれた手紙が入っていた。
そして、その手紙には遠藤友哉を弁護してもらうために、松風義輝(松山ケンイチ)という弁護士に依頼しろと書かれていた。心麦は、混乱しながらも松風に会いに行くが、そんな訳のわからない案件は受けられないと言われてしまう。
刑事の赤沢正(藤本隆宏)は、間違いなく遠藤友哉が犯人だと言う。一方、松風は遠藤友哉と面会、再び心麦と会い弁護を引き受けることにする。
何か手がかりはないかと、自宅に戻る心麦は、そこで週刊誌の記者、神井孝(磯村勇斗)に出くわす。彼は、遠藤力郎の起こした東賀山事件についての記事を書いた人物だった。
そして、心麦は神井に会うことにする。そこで衝撃的なことを言われる。「あなた、山下春生さんの本当の娘じゃないですよね」と。
考察要素
今期一の考察要素が高い作品になりそうな第一話だった。
第一話で提示された主な謎は、以下の通り。
- 1)春生を殺したのは、誰なのか
- 2)心麦と春生の関係は?
- 3)春生が殺された理由
- 4)東賀山事件の真相
- 5)週刊誌記者の神井はなぜこの事件を追うのか
1)春生を殺したのは、誰なのか
今は容疑者として逮捕されている遠藤友哉が犯人と思われている。しかし、叔母の木村夏美(原日出子)は、春生の保険金を預かって管理しておくと言う。確かに心麦はまだ学生で、大きなお金を管理するのは大変かもしれないが、果たして彼女は信用できるのか。
刑事の赤沢は、絶対に遠藤友哉が犯人だと断言しているが、断言しすぎているようにも見える。心麦から神井のことを聞いた時には、どこか心穏やかではない表情だった。
2)心麦と春生の関係は?
第一話の最後に投下された衝撃発言。心麦は、この事件について、父が残した手紙を信じるから自ら進んで関わることを決めた。なぜ父を信じるのかを松風に問われた心麦は、自分が一番父のことを知っているからだと答えた。その思いに答えて松風はこの依頼を引き受けるのだが、いきなり父娘の関係に疑念が生じる。主人公の出生の裏に何が隠されているのか。
3)春生が殺された理由
そもそも、春生が殺された理由はなんだろうか。保険金目当てが、刑事時代の恨みか、それとも何か恐るべき事実でも知っていて口封じのための殺されたのか、それ以外になにか理由があるのか。
彼の残した手紙には、何か重大な隠し事をしているのではと受け取れることも記載されている。殺害も動機も重要な要素になりそうだ。
4)東賀山事件の真相
東賀山の住宅街で林川一家6人が殺害された事件。逮捕されたのは、第一発見者の遠藤力郎で、彼を逮捕したのが山下春生と赤沢正だった。生後半年の次女だけが、別の部屋にいたので助かったという。犯人とされた力郎の息子、友哉は施設に送られ、そこでいじめを受けており、成人後も放火で一度逮捕されている。今回の春生の放火殺人は、彼の出所直後に起きている。
生後半年の赤ん坊は、今どうしているのか?(心麦なのか?)
5)週刊誌記者の神井はなぜこの事件を追うのか
神井孝は東賀山事件を追っているようだ。彼がなぜこの事件にこだわっているのかも気になる。
豪華出演陣の見事な芝居
芝居が安定していて見ていて気持ちいい。主演の広瀬すずは存在感があるし、松風役の松山ケンイチは飄々としていて、良いアクセントをつけている。相棒役の波佐見幸信(森崎ウィン)との関係が気になる。
リリー・フランキーが広瀬すずの父親役だが、彼の底が見えない、何を腹の中で考えているのかわかりにく存在感がミステリーの要となっている。上手いキャスティングだ。成田凌の死んだ魚のような目は相変わらず良い。酒向芳はまた犯人っぽい役をやらされている。弱者男性とか無敵の人っぽい役をやらせると、この人の右に出る人はいないな。その他、西田尚美や仙道敦子も出演している。
原作は、浅見理都の漫画『クジャクのダンス、誰が見た?』だ。『イチケイのカラス』を描いた人ですね。プロデューサーの中島啓介は、『Eye Love You』など意欲的なドラマを製作している人だ。