TBS日曜劇場『御上先生』第6話「confession」は、御上の兄の死の真相と彼の影響を受けた御上の内面に迫る重要な回となった。
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物語は御上の中学時代の回想から始まる。宏太の言動が周囲から「おかしい」と言われ始め、御上が何かを目撃するシーンが印象的だ。煙の中に横たわる兄の遺体らしきもの——そのイメージが、今の御上の生き方にどれほどの影を落としているのかが後々浮かび上がる。
一方で、現在の御上の周囲でも問題が多発している。御上のクラスの女生徒の椎葉が生理を盗んだらしいのだがその理由は貧困によって生理用品を買えないのではと、一色(臼田あさ美)と是枝(吉岡里帆)と御上が話し合っている。同時に週刊誌には御上の兄についての記事が掲載され、クラスがざわついている。20年前のことに過ぎないと御上は意に介さず授業を続けようとするが、生徒たちには動揺が広がっているし、御上はなんとも思っていないなんてことはないのが明白だ。
この回の核心は、御上がついに兄の死について語る場面だ。富永にも「説教」され、御上はこのことを生徒たちに隠しているのは誠実ではないと考えるようになった。御上は次元が調べているとあたりをつけて、彼から語らせる。宏太は学校への抗議のため、自らの命を絶った。中等部からの進学において、発達障害の生徒が不当な扱いを受けていることに抗議し、署名活動を行ったが理解されず、孤立。学校と社会への怒りから、自らの死を抗議手段とした。その背景を次元が説明し、それを御上が認める形となる。
御上自身も、兄の死に対する罪悪感を吐露する。兄を尊敬し、人生のモデルとしていたが、ある時「お前の兄、おかしい」と友人に言われ、それを兄本人に伝えてしまった。結果として、兄をさらに追い詰めることになったのではないか——その後悔が御上の心に深く刻まれていた。
御上は、兄のようなことを繰り返さないために文科省に入ったが、そこでの組織の硬直性に失望する。小さな細胞は頑張っても組織全体は硬直する一方、そこで隣徳学園にやってきて、小さな細胞は小さな細胞の生徒に向き合うしかないと思ったという。しかし、この学校に来て、生徒たちが真正面から問題に向き合う姿勢を見て、自分自身がまだ向き合えていなかったことを痛感する。そして、「これからは絶対に目をそらさない」と生徒たちに約束する。
また、一色真由美との対話のシーンも印象的だった。御上は彼女を老人ホームに呼び出し、認知症の母と対面させる。母は御上を「宏太」と呼び、一色もまた宏太の存在に縛られ続けていることが明かされる。さらには、一色がかつて文科省の前で御上に「学校の闇を暴いてほしい」とけしかけていたことも発覚する。御上の行動の原点に彼女の影響があったことが示さた。ある意味、この物語を始めたのは一色だったのだ。一色は、中学時代に宏太と同級生だった。御上とはその頃からの顔なじみだったのだ。
小さな細胞として生徒に直接向き合う、一色に闇を暴いてと頼まれたこと。この2点が御上の行動動機だったということが今回、明かされた。
御上の過去については大きな謎が解け、彼の行動動機もわかってきた。そして、生徒たちとの絆もさらに深まった。しかし、椎葉の問題はこの回だけでは解決しなかった。彼女は、バイトを掛け持ちしながら、一人で認知症の父を介護している。いわゆるヤングケアラーだ。どうやって彼女の助けるのか、御上と是枝は頭を悩ませる。
そんな折、一本の電話が御上に入る。どうやら椎葉に関することらしい。「警察には言わないでほしい、椎葉は僕の生徒です」と電話越しに伝える御上。一体何があったのだろうか。
文科省サイドも隣徳学園に何らかの圧力をかけたがっている様子。古代はそれをはねのけ、間で動く溝端を邪険に扱う。こっちの謎はまだ明かされていない。一色がそもそも御上に頼んだ学校の闇が何を示すのか、今後の展開で明かされる。
今回のエピソードは、真剣に問題に向き合う人が孤立化してしまう日本社会の冷たさを描くものだった。波風立てる人は嫌われやすい傾向にあるのが学校だけに限らない。だれも問題に向き合おうとしないのは、どの組織にもある。というより、このドラマの問題意識では学校でそういう組織のあり方を見て学んでいるから、どこに行ってもそんな組織ばかりになってしまうということになるだろうか。
登場人物
御上孝(松坂桃李)
是枝文香(吉岡里帆)
神崎拓斗(奥平大兼)
富永蒼(蒔田彩珠)
次元賢太(窪塚愛流)
千木良遥(髙石あかり)
倉吉由芽(影山優佳)
櫻井未知留(永瀬莉子)
槙野恭介(岡田将生)
溝端完(迫田孝也)
一色真由美(臼田あさ美)
津吹隼人(櫻井海音)
中岡壮馬(林 泰文)
真山弓弦(堀田真由)
謎の青年(高橋恭平)
塚田幸村(及川光博)
冴島悠子(常盤貴子)
古代真秀(北村一輝)
東雲温(上坂樹里)
椎葉春乃(吉柳咲良)
御上宏太(新原泰佑)