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2025年夏の注目作品、軒並み製作費が天文学的数字に
ハリウッドの2025年夏の大作映画群が、これまでにない製作費の高騰に直面している。新型コロナウイルスの影響による撮影遅延、ハリウッドストライキ、そして物価上昇などの要因が重なり、マーケティング費用を含めた総製作費が4億ドル(約600億円)を超える作品が続出している状況である。
「ミッション:インポッシブル」最終作、製作費4億ドルの衝撃
最も注目を集めているのは、トム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル – ザ・ファイナル・レコニング」である。同作品は税制優遇措置を差し引いても純製作費が4億ドルに達し、史上最も高額な映画の一つとなった。
パラマウント・ピクチャーズとスカイダンスが2018年に2作品の製作を決定した当時、誰もこれほどの予算膨張を予想していなかった。前作「フォールアウト」の純製作費が2億~2億5000万ドルだったことを考えると、その増加率は驚異的である。
DC新作「スーパーマン」も高額予算で注目
ジェームズ・ガン監督によるDCスタジオの新作「スーパーマン」も、製作費の話題を呼んでいる。オハイオ州政府への申請書類では総製作費が3億6380万ドルと記載されているが、税制優遇措置後の純額は2億2500万ドルとされている。
しかし、マーケティング費用として最大2億ドルが投じられる可能性があり、総費用は4億ドルクラブに仲間入りする見込みである。同作品の最初の予告編は2億5000万回以上の再生回数を記録し、ワーナー・ブラザース/DCの歴史上最高の数字を達成している。
「ジュラシック・ワールド」新作は予算削減に成功
一方で、ユニバーサル・ピクチャーズとスティーブン・スピルバーグのアンブリン・エンターテインメントによる「ジュラシック・ワールド:リバース」は、予算管理に一定の成功を収めている。スカーレット・ヨハンソンら全く新しいキャストを起用した同作品の純製作費は1億8000万ドルに抑えられているが、マーケティング費用を含めると総額は3億3000万~4億ドルに達する可能性がある。
アップル「F1」映画も3億ドル超えの噂
アップル・オリジナル・フィルムズが製作し、ワーナー・ブラザースが劇場公開する「F1」についても、製作費3億ドルという情報が流れている。制作陣はこの数字に異議を唱えているが、マーケティング費用を含めると総額4億ドルに近づく可能性もある。
業界専門家「持続不可能な状況」と警鐘
ウォール街のアナリスト、エリック・ハンドラー氏(ロス・キャピタル)は「これらの費用は持続不可能である」と指摘している。「明らかに、ストライキやコロナなど予算に悪影響を与える特殊要因があった。業界が正常化すれば費用は下がるだろう」と述べている。
ベテラン資金調達者も「損益分岐点が7億~9億ドルに達する状況では、まったく理にかなわない」と厳しい見方を示している。
フランチャイズ価値が製作費を正当化
一方で、業界関係者は単発の興行収入だけで判断すべきではないと主張している。フランチャイズ作品は、TV放映権、商品化権、DVD販売、ストリーミング配信権など多様な収益源を生み出すためである。
実際に「ミッション:インポッシブル」シリーズでは、最新作公開に合わせた過去6作品のデジタル配信売上が前年同期比160%増を記録している。
AI時代到来で実写アクションの価値高まる
制作関係者の一人は「俳優が自ら危険なスタントを行い、CGIをほとんど使わない映画を再び見ることはないだろう。AIが主流になる」と予測している。トム・クルーズの30年間にわたる「ミッション:インポッシブル」出演が終了することで、実写アクションの希少価値がさらに高まる可能性がある。
2025年夏の映画興行がこれらの巨額投資に見合う結果を出せるかどうか、業界全体が注目している。
ソース:Mission: Impossible, Jurassic World, Superman Budgets Test Box Office