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MPAA(全米映画協会)が動画をembedするのは著作権侵害だと言い出す、そしてヤバい判例が出来た

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この機能をがそのうち無くなる?

全米映画協会が、ちょっとトンデモないことを言い始めています。SOPAの最大の支持母体なんで今に始まったことじゃないんですが。というよりヤバい判例ができてしまいました。

 
MPAAは、著作権を侵害している動画をembedし他のサイトに張り付ける行為も、著作権侵害にあたると主張し始めました。

 

ポルノ会社のFlava Worksが動画ブックマーキングサイトのMyVidsterに対して著作権侵害の訴訟を起こしていて、これに相乗りするような形でMPAAが議論に加わっているという状態のようです。

MyVidstarは、ネット上の好きな動画のリンクを保存したり他のユーザーとシェアするサイトでそれ自身がストリーミングのビデオのホスティングはやっていません。embedコードを貼ってMyVidster上の自分のページで視聴可能になります。

経緯をざっと説明します:

ポルノ会社のFlava Worksは自社の作品が多数、このサイトにembedされているのを発見、DMCA準拠の削除要請を送り、MyVidsterはこれに応じましたが、なぜかそれでも満足しないFlava Worksは最終的に訴訟に踏み切ったようです。
Case: 1:10-cv-06517

この裁判はイリノイの巡回裁判所で争われており、John F. Grady判事がコンテンツのホスティングとembeddingを法的に区別されない、という判決を下して、MPAAがこれを支持する意見書を出しとのこと。MPAAは、違法なコンテンツをembedすることも違法コンテンツをアップロードすることと同じく著作権を侵害するリスクのある行為だと主張しています。Ars Technicaによると、MPAAの提出した意見書にはこうあるとのこと。

「embedリンクに関して本質的な悪質さはないが、このテクニックは著作権侵害を犯している動画サイトを運営するにあたり広く一般的に用いられている」MPAA: you can infringe copyright just by embedding a video

広く一般的に」というのがポイントですね。これはMPAAは著作権を侵害しているコンテンツをembedしているサイトは全て著作権侵害に該当すると暗に言っているようなものです。

この裁判のポイントとなっているのは、embedビデオがユーザーによってたくさん集められたサイトは、セーフハーバー条項によって保護される対象であるか否かになるわけですが、セーフハーバーによってコンテンツを提供するプラットフォームは、著作権侵害を助長しないよう努める必要があり、侵害を犯すユーザーに対しては、アカウントの一時停止や削除などのきちんとした対応を求められます。

でも、MyVidSterのオーナー、Marques Gunter氏はちょっと良くない答弁をしてしまったようですね。
embedやブックマークは直接の著作権侵害に当たらないから、その動画をホスティングしているサービスに問い合わせるべきだ、的なことを言ってしまったようです。これが判事には、故意に著作権侵害を見逃していると写ったようです。

でも、削除要請を受け取ったあと、MyVidsterはちゃんと削除に応じているんですがね。DMCAの基準に従って削除要請に応じましたということを強調しておけばよかったのではないかと思うんですが。。。。

そして結果、ホスティングとembedには著作権に関して法的な区別はなされない、という結構恐ろしい判決が出てしまいました。

 

この判決に意と唱えているのが、Googleとfacebookです。ホスティングとembedは明確に区別されるという判例が2007年に下されているというのがその根拠。
Perfect 10, Inc. v. Amazon. com, Inc., 487 F. 3d 701 – Court of Appeals, 9th Circuit 2007

Perfect 10というヌード写真を提供している会社がGoogleを相手取って争った裁判での判例ですが、Googleは世界中のウェブサイトをインデックスして、検索結果を作っており、その中には著作権を侵害している写真を掲載したサイトなどもあります。それらが自動的にインデックスされた結果、イメージ検索した時にサムネイルのリンク先に著作権侵害サイトが出て来てしまい、Perfect 10の名前など微塵も出てきません。これはGoogleの著作権侵害にあたると主張したのですね。結果はPerfect 10の敗訴で、googleは著作権侵害画像をインデックスしているだけで、そのコンテンツを提供しているホストではないので、googleの著作権侵害ではないという判断です。

たしかに、今回の判決をバッティングする部分はあります。違いをあげるとすると、googleの場合、自動ロボットによるインデックスなので、故意ではない、MyVidsterの場合、上記のまずい証言のせいで故意と捉えられたというところにあります。

ただこの恣意性の判断も非常に微妙な気がします。日々ユーザーから膨大な数の投稿を全てチェックすることは当然できず、彼の上記の証言から故意の見逃しと言い切れるかどうか。

たとえMyVidsterから動画が削除されても、それはembedされたものにすぎないので、別のどこかでその動画は存在し続けて、著作権侵害をしているわけですから。しかも他サイトにもembedされているでしょうから、MyVidsterの主張も間違っているわけではない。

 

しかし、この判例はヤバい気がします。これはアメリカの話ですけど、日本でも同様の判断が下される場合、embedする前にこれが正当なコンテンツかどうか、いちいち確認を取らないといけなく、それなしではフェイスブックやTwitternで動画を共有することもできないということになります。
今回はembedを巡って争われているんですが、本質的にはリンクもオンラインブックマークも変わらないでしょう。

この判決でアウトになりそうな日本のサービスはなんでしょう。はてな、ミクシイ、NAVERまとめもアウトかな。。
おお、天下のNTTのISP、OCNのポータルサイトもアウトかな。中央に動画貼ってあるわ。。。

TPPの知財項目には著作権の非親告罪化があると言われていますが、もしembedが著作権侵害であるというなら、非親告罪化された時には、相当怖いことになりますね。自分がアップロードしたのでもダウンロードもしていなくても、フェイスブックやTwitterで違法動画のリンク紹介しただけである日突然逮捕の可能性があります。

非親告罪化がなくても、この判例は十分に萎縮効果はあります。embeddingってウェブサイト作るときによく使うテクニックで、リッチなウェブコンテンツ作りには欠かせないものですよね。電子書籍にも組み込めたり、いろいろ便利な機能なんですが、YouTubeなどのプラットフォームがこの判例に反応して、この機能を削除、あるいは制限を加えることもあるかもしれません。

参考リンク:

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