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『機動戦士ガンダム 水星の魔女』インタビュー記事の修正と「お詫び」の炎上事件について解説しました

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 マグミクスに、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の「月刊ガンダムエース2023年9月」号に掲載されたインタビュー記事が修正されたことで炎上しました。その件についての解説と、何が問題だったのかについて、書きました。

 「結婚した」は憶測…『水星の魔女』インタビュー記事の修正と「お詫び」に、ファンが激怒した理由 | マグミクス

 件の記事は、紙版ではスレッタとミオリネが結婚したと書かれていたのですが、電子書籍版ではそこが特になんの断りもなくその記述が消されていました。それを受けて、これは同性愛差別ではないかという批判を受けています。ファンの多くが二人の結婚を祝福していたため、公式がそれないものと扱うような行為で怒りを買っているという状態です。

 『水星の魔女』はジェンダー表彰の上手さが評価されていた作品でもあったので、この騒動はとても残念です。ほんとに削除の必要があったのか疑問ですし、作中では明らかに結婚死ていると思われる描写をしているので、なんの問題もないと思うんですね。

 記事では、世論の変化、同性婚賛成が過半数を超えている状態、国においては法律だけが変わっていない状態で、広報対応としても世論の変化に敏感になるべきことを指摘しました。みんな、いまはもう普通に結婚していいと思っているのです。
 
 
 以下、原稿作成時のメモと構成案。
 
 
———————
 
 
参考
『水星の魔女』を終着点とする、百合作品の変遷、および作中における恋愛観(セクシャリティ観)の変遷|慶應SF研究会

スレミオしか語らん『機動戦士ガンダム 水星の魔女』1クール全話感想&レビュー – 沼の見える街

『水星の魔女』は日本アニメの革命?“同性婚”エンドでディズニー超え – まいじつエンタ

柚ししゃも on Twitter: “『水星の魔女』、第1話で「トロフィーワイフ」の概念に基づいた台詞回しをしていたのが象徴だけど、脚本インタビューでも未来の話だから同性婚が普通にある世界観って言及があったりで、全体的に制作側の志みたいなものを第1期では感じていたんだよね(続)。” / X

機動戦士ガンダム 水星の魔女:「ガンダムエース」で小説版連載スタート 大河内一楼インタビューも – MANTANWEB(まんたんウェブ)

「月刊ガンダムエース 2023年1月号」本日発売!『水星の魔女』シリーズ構成・脚本の大河内一楼インタビューを掲載! |

月刊ニュータイプ、水星の魔女関連の記事が掲載されている号

• 2023年2月号、2023年1月10日。
– 2022年11月号、2022年10月10日。
– 2022年12月号、2022年11月10日。
– 2023年1月号、2022年12月10日。
– 2023年2月号、2023年1月10日。
– 2023年8月号、2023年7月10日。

機動戦士ガンダム 水星の魔女:新規ファン開拓に手応え ガンダムらしく奥深さも – MANTANWEB(まんたんウェブ)

先日、ニューヨークのアニメイベントに出席した際、『こういう作品を待ち望んでいた』というリアクションもあって、すごくうれしかったですね。『ダイバーシティー(多様性)な作品だ』という声も聞きました」

「水星の魔女」キャラ原案・モグモインタビュー – アキバ総研

――パンツスタイルなのもモグモさん考案でしょうか?

モグモ それは小林監督の案です。最近のアニメでもあまり見ない感じですし、すごく面白いな、男女共通なのもいいなと思ったので、パンツスタイルで描きました。

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」市ノ瀬加那×Lynn対談 初の女性主人公、“学園が舞台のガンダム”が描くものとは | WEBザテレビジョン

Lynn

私は男性だから、女性だからという枠組はあまり気にしていなくて、今回はたまたま女性2人にスポットが当たっているというくらいの感覚です。確かに主人公が女性というのは過去のTVシリーズにはなかった切り口ですけど、これまでの作品でも女の子もモビルスーツに乗って戦ってましたし、「水星の魔女」にも男性キャラクターの勇ましい戦いもあるし、私たち自身は実はそこまで意識しているわけではないんですよね。

市ノ瀬

そうですね。小林(寛)監督からも「可愛く演じようとしなくていいですよ」というお話を頂きました。彼女たちも、私たちと同じ人間として生活している子たちなので、そのリアリティーを大切にされているのかな、と思いました。

『機動戦士ガンダム水星の魔女』岡本プロデューサーインタビュー「固定概念を外して見ていただけると嬉しい」 | SPICE – エンタメ特化型情報メディア スパイス
 
 

Point

経緯

なぜファンが怒っているか

作中でどのように描写されたのか

↓ここにつなげる

クィア表象の歴史とアニメにおけるクィア表象の近年のあり方。。。百合問題

社会は今、同性婚に対してどう思っているか
 
自由に解釈というが、憶測と言ってしまったら、その解釈は「憶測」なのだとされ、つぶされているに等しい。

もうみんなが結婚したと解釈したあとだった

アニメーターの描いた絵を信じるべき。アニメは絵の表現、言葉よりも絵の方が強いと信じる人たちの表現。絵を信じる
 
 

Intro

水星の魔女が炎上している。
その経緯、

月刊ガンダムエースのインタビューの記述が紙版と電子版で異なる。「結婚」の文字が電子版では削除されている。

それに対して、公式が声明を発表。ガンダムエース編集部の憶測によるものであるとした。

これにファンがかなり反発。スレッタとミオリネが結婚したと解釈しているファンも多かったために裏切られた

そして、これは同性描写を装ったクィアベイティングではないかという批判も起こっている。
 
 
Body1なぜ起こっているのか。

作中、水星の魔女は何を描いた作品だったか。

同性愛表象が出てくる作品

決闘で花嫁としてやり取りされているミオリネ、それをスレッタが決闘に勝利することで、スレッタが花婿となる。

私、女ですけど。というセリフに対して、「水星ってお固いのね。こっちじゃ全然アリよ」と同性婚が一般的である世界だと示唆する第一話で幕を開ける。

お前はトロフィーなんだよ、というグエルの第一話の台詞は、「トロフィーワイフ」という言葉を連想させ、男社会のマスキュリンな特徴の中で抑圧、犠牲になる女性を女性が助ける、それが同性婚的なものによってなされるという展開が特徴になっている。

本作は遠い未来の話でもあり、同性婚が当たり前になっていてもあまり驚きはない。

11話で、ミオリネがスレッタへ、そういうものから逃げることが出来たと感謝の意を吐露して2人の仲が親密になった矢先、戦争の残酷さが牙をむき、様々な困難が降りかかりますが、最終話では2人が左手の薬指に指輪をはめて仲良くしている、スレッタの姉にあたる存在を小姑と呼んだり、家族的関係と思える描写で締めくくっている。

こうした描写は、普通に同性愛的感情を描いたものと解釈できる。クィア・リーディングという作品の見方があり、それは一般的に異性愛・男女2元論で作られた作品にも別の解釈を試みるものですが、そういう専門的な見方でなくても、普通に連想できるレベルで描写されている。

本作は少女革命ウテナの影響を指摘する人が多かった。ウテナは97年当時として、ジェンダーの表象として先進的だと今も評価の高い作品です。その志を感じさせる作品で、すでに同性婚が当たり前になった世界で、それをテーマにすることなくガンダムとして戦争の話を描いている。異性婚がことさらテーマにならないのと同様に同性婚も一般的なものとして扱い、だれもスレッタとミオリネのことを不思議がる描写もない。

ウテナでは主人公のウテナが王子様になりたくて男装をしていますが、水星の魔女の学校はユニセックスなデザインの制服で、男女とも同じデザインです。なので、ジェンダーで別れていないためにウテナのように服が問題になることがない。この制服のデザインは小林監督の案のよう。

学校の制服のデザインも男女共用のユニセックスなものになっています。(これは小林監督の指示)

「水星の魔女」キャラ原案・モグモインタビュー – アキバ総研

――パンツスタイルなのもモグモさん考案でしょうか?

モグモ それは小林監督の案です。最近のアニメでもあまり見ない感じですし、すごく面白いな、男女共通なのもいいなと思ったので、パンツスタイルで描きました。

ちなみに、小説版では、ミオリネの旧花婿も登場する。同性で幼馴染で子どものころに結婚の約束をしたということのよう。
ちなみに『小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女』では、ミオリネの旧花嫁・ユーシュラー・ミルザハニという女性が登場します。ミオリネの幼馴染で小さいころに結婚の約束をしたということでスレッタに決闘を申し込むのです。

最後は企業連合の支配もスペーシアンとアーシアンの対立や分断、格差も解消はされていない、世の中はなかなか良くなっていかないけど、そんな中でスレッタ親子とミオリネが仲睦まじくしているのが、ささやかな希望として提示されて物語を終えています。

作品を特別なひねりなく解釈すれば、2人の結婚は大きな意味を持つもので、締めくくりの希望の象徴とも言える。
 
 

Body2 広報の憶測という言葉

憶測とは、根拠なく、いい加減に」という意味を含んでいる。この言葉を使って記事の監修ミスを指摘していることは重大な間違い。

つまり、2人が結婚したという解釈は「根拠なく、いい加減」なものだと公式広報が言ってしまった Goo辞書では「はっきりした根拠もなく、いい加減に推しはかること。」とある。

月刊ガンダムエース2023年9月号掲載のインタビュー記事についてのお詫び|機動戦士ガンダム 水星の魔女 公式サイト

しかし、あの作品を観たかなりの人が、2人を結婚したと解釈している。それほど少数派の意見ではなく、それは作中の結婚指輪という、強い根拠があったうえでの解釈。間違っても憶測ではない。

しかも、すでに最終話が放送されて何日も経過して、その解釈はそれなりのボリュームがある状態だった。それを「憶測」と斬ってしまった。

作品側としては、本編をご覧いただいた皆様一人一人の捉え方、解釈にお任せし、作品をお楽しみいただきたいと考えておりますので、ガンダムエース編集部とも協議の上、修正可能な電子版の記述は、本来の依頼通りに修正し、現在は配信しております。

しかし、「憶測」はたいてい当たっていない解釈に対して、「それは憶測にすぎない」というような使い方をする単語であって、憶測としてしまったら、結婚という解釈は間違いと言ったに等しく、少なくとも「結婚」の解釈はつぶれてしまっている。
 
 
Body3社会における同性婚をめぐる状況

筆者は同性婚訴訟の取材をしたことがある。原告団の当事者の方が、こう言っていた。

「ごくありふれた家庭を築いてきたし、周囲の理解も進んでいる。制度だけが変わらない」と。

東京高裁「同性婚訴訟」の控訴審はじまる 「周囲の理解進んでも制度の壁ある」原告らが意見陳述 | 弁護士JPニュース

世論調査では同性婚に賛成の人は過半数をすでに超えています。ただ、制度だけがその世論に合っていない状態になっています。女性同士が結婚したからといってことさらにうるさい人はすでにすくなくなっておいて、同性婚賛成が多数派という状況です。

そういう時代にわざわざぼかす必要はもうないのではないと考えています。どっちつかずの曖昧表現の方が良い時もあれば、そのせいで傷つく人もいます。同性愛者の方々は、まさに自分たちの性的志向を隠さないといけない時代がありました。結婚という二文字を削除するという行為は、やはり同性の結婚は隠さねばいけないものだというメッセージを発信してしまっている。現代日本の多数派の考えからずれていると言えます。

エグゼクティブプロデューサーが取材に答えて、ダイバーシティの作品だと言うこともあることを紹介しています。

機動戦士ガンダム 水星の魔女:新規ファン開拓に手応え ガンダムらしく奥深さも – MANTANWEB(まんたんウェブ)
先日、ニューヨークのアニメイベントに出席した際、『こういう作品を待ち望んでいた』というリアクションもあって、すごくうれしかったですね。『ダイバーシティー(多様性)な作品だ』という声も聞きました」

 
 
Body4アニメ作品の本質は広報か、作品か

しかし、広報がどうあろうと、画面は不変です。作品の本質は、映像にあります。

アニメは絵によって作られる映像作品です。絵なので、偶然に映りこんでしまうことはなく、画面の全てが作り手の意図によって配置されています。西日を受けて光輝く2人の結婚指輪も、作り手が意図して描き込んだものに他なりません。

アニメの本質はその描かれた絵ですから、筆者はこの絵に描かれたものを信じます。言葉よりも絵の方が強いと信じる人たちの表現でしょうから、その人たちが選んだ描写が作品にある。これが最も信頼に値するもの。

 
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 メモ終わり。自分の取材した体験なども入れてみました。同性婚裁判の当事者の方たちも、世間は変わった、でも法律だけ変わっていないという風に言っています。今回の広報の対応は、世間の過半数がすでに賛成していることに対して背を向けるような対応でした。広報が世間に背を向けてどうするんだと思います。
 
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